2008年度 学術交流支援資金申請書電子教材作成支援

 

空間分析

環境情報学部教授 厳網林 (yan@sfc.keio.ac.jp)

総合政策学部教授 福井弘道 (hfukui@sfc.keio.ac.jp)

総合政策学部准教授 古谷知之 (maunz@sfc.keio.ac.jp)

 

概要

SFCでは2007年から未来創造カリキュラムが始まっている。その中で私たちは従来のGIS関連科目を整理し、授業と演習を分離して、空間分析という4単位科目を設置した。2007年秋に初めて実施した結果、良好な教育効果が生まれた。42人の履修者はほぼ毎週出席し、40人の学生が最後まで課題をこなして単位を取得した。授業評価では学生の満足度が高かった。

授業は厳・福井・古谷・木村(非常勤講師)の四人が担当し、TA1、SA2名の体制の下で行われた。全13週間を前半と後半に分け、前半では講義と演習を半分ずつ、後半ではグループワークによる研究課題が行われた。前半の演習はArcGISの操作が基本だが、演習内容をすべて電子化した。学生はオンラインマニュアルを見ながら、自分のペースで進められるようになっている。このオンラインマニュアルはArcGISの機能説明をなぞるだけでなく、学生により親近感を持ってもらえるように、SFC周辺の自然環境や商業施設を題材にし、初歩から始めて、毎週少しずつあたらしい情報を取り入れ、6週後には同地域を多数の側面から考察できる地理指標が作られるようになる。それらの地理指標は相互に関連性もあり、重回帰を掛けて関係を考察すれば、新しい知見を見出す可能性もある。このようにして、学生はソフトウエアの操作を習うだけでなく、空間データの見方、実問題の解き方を習うことができる。

このような方法でオンライン教材を作成し、実践した結果、予想以上の効果を得た。しかし、授業での観察及び授業評価を通して、次の問題も明らかになった。

ひとつはGISのユースケースの提示である。現在のオンライン教材には一通りの練習内容しかない。GISはほかにどのような可能性があるかについて、前半の講義でそれぞれの教員が自分の研究分野の立場から紹介してもらっているが、それをどのように現実のものにしているかについて、演習内容につながらなかった。

もうひとつはデータの入手が困難なことである。グループワークで学生たちから様々な発想が生まれるが、それらを試すためにはデータが必要になる。そのデータはSFCGIS関連研究室に存在することが多いが、統一的に整備されていないため、探しだすには手間がかかってしまう。また、データはすぐにGISに投入できるファイル形式となっていないため、学生の要望を答えるために、教員、TASAが個別にしか対応できていない。これは学生にとっても大きな負担となってしまう。故に授業評価の自由記入には、データを探すために時間がかかって、プロジェクトが思うように進まなかったといった記述もみられた。

以上の問題を、私たちは1)GISのユースケースの整備、2)共通データベースの整備、3)Webサービスプラットフォームの構築を通して解決し、電子教材による授業支援の高度化を図った。

 

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