2008年度 学術交流支援資金 電子教材作成支援 研究成果報告

2008年度 学術交流支援資金 電子教材作成支援

本プロジェクトの背景および目的

本研究では,本塾の各キャンパス内に散在する多様な学問領域のマルチメディア知識情報源,特に、遠隔授業などで活用されている動画像によるe-learning 教材を対象として,履修者の理解度に応じたデータベース横断的な授業教材自動配信機構を実現する.具体的には,研究代表者が2006〜2007年度の研究により実現した,アクティブ・マルチデータベースシステムを前提として,(1)異種分散環境上の動画像メディアデータ群を自動的に分析・検索する機能,および, (2)授業履修者の理解度に応じた情報フィルタリング機能の研究・開発を行う.この2機能を導入したアクティブ・マルチデータベースシステムを実現することで,本塾の知的資産をデータベース横断的に検索・分析し,授業履修者の理解度に応じた情報を履修者に自動的に配信することが可能となる.さらに,塾外のインターネット上に存在する有益な知識源を自動的に取り込み,タイムリー,かつ,適切に授業履修者へ配信することも可能にする.本研究の成果として,インターネット検索やデジタルライブラリ検索などに不慣れな授業履修者であっても,授業に関連する情報を自動的に取得することが出来る実働システムを構築する.本研究は,従来の紙媒体の教材では不可能であった,履修者の理解度に応じた自動的な教材編成・学習環境を実現するものであり,その成果は本塾のみならず,電子教材を用いる企業・組織に広く適用可能なものである.

本研究では,本塾の各キャンパス内に散在する多様な学問領域のマルチメディア知識情報源,特に、遠隔授業などで活用されている動画像によるe-learning 教材を対象として,履修者の理解度に応じたデータベース横断的な授業教材自動配信機構を実現する.具体的には,研究代表者が2006〜2007年度の研究により実現した,アクティブ・マルチデータベースシステムを前提として,(1)異種分散環境上の動画像メディアデータ群を自動的に分析・検索する機能,および, (2)授業履修者の理解度に応じた情報フィルタリング機能の研究・開発を行う.この2機能を導入したアクティブ・マルチデータベースシステムを実現することで,本塾の知的資産をデータベース横断的に検索・分析し,授業履修者の理解度に応じた情報を履修者に自動的に配信することが可能となる.さらに,塾外のインターネット上に存在する有益な知識源を自動的に取り込み,タイムリー,かつ,適切に授業履修者へ配信することも可能にする.本研究の成果として,インターネット検索やデジタルライブラリ検索などに不慣れな授業履修者であっても,授業に関連する情報を自動的に取得することが出来る実働システムを構築する.本研究は,従来の紙媒体の教材では不可能であった,履修者の理解度に応じた自動的な教材編成・学習環境を実現するものであり,その成果は本塾のみならず,電子教材を用いる企業・組織に広く適用可能なものである.

2008年度の活動報告

背景

広域ネットワークに連結された独立なデータベース群を対象とした検索・統合機構の実現によって,それらのデータベース群の利用価値は飛躍的に増大する.このシステムをマルチデータベースシステムと総称する.我々は,これまでの研究において,マルチデータベースシステムの実現方式について示してきた.本塾が擁する大量の情報資源は,ユーザからの問い合わせ要求などに応じて駆動する,受動的なシステム上に蓄積されている.日々増加し続ける情報資源の変化を履修者が把握し続けることは困難であり,また,学習過程にある履修者は学問領域の詳細な情報を持たないため,自身がその存在を知らない情報については一切探そうとしない傾向がある.そのため,既存のシステム上に蓄積された情報資源は,死蔵されていく恐れがある.しかしながら,様々なインターネット・アプリケーションに対して,ユーザからの明示的な要求によらない能動的な振る舞いの実装は,データの監視,条件の評価方式,データ管理方法など,アプリケーションが有する諸機能に横断的な変更を要求するため,決してトリビアルなタスクではない.これまで,データベースの検索,更新などといったイベントに反応して,別の検索,更新などといったアクションを起動するイベント駆動型のデータベースシステムとして,アクティブデータベースシステムが提案され,利用されてきた.しかし,従来のアクティブデータベースシステムは,単一のデータベースに閉じて運用されることを前提に設計されており,広域ネットワーク環境における能動的な振る舞いを実現することは困難であった.全塾に適用可能な電子教材を効率的に開発するためには,能動的な振る舞いを有するアプリケーションの開発・実行基盤となる新たなアクティブデータベースシステムの実現が肝要である.

アクティブ・マルチデータベースシステムの概要
アクティブ・マルチデータベースシステムの概要

マルチメディア・データベース・サーチエンジン技術による能動的な電子教材配信機能の実現

本プロジェクトでは,本塾の各キャンパス内に散在するする多様な学問領域のマルチメディア知識情報源を対象とし,授業に関連する情報資源を自動的に配信するアクティブマルチデータベースシステムを実現した.また、アクティブマルチデータベース技術の応用により,自動的・能動的に履修者の情報獲得を支援する仕組みを有する電子教材を実現した.これにより,授業履修者は,授業に関連する情報をモバイル端末から自動的に取得することが可能となった.

本研究では、ストーリーを有する動画像データを対象として、1) 動画像中の色彩の変化を計測し、動画像中の色彩印象の変化をストーリーの変化として抽出する方式、2) 動画像中のピクセルの動き(モーメント)の変化を計測し、動画像中の動作印象を抽出する方式を実現した。本システムの特徴は、(a) 利用者の感性的嗜好に応じてネットワークから動画データの自動抽出・配信を行うこと、(b) 動画像の内容が持つ印象を計量空間によって直接計量し、取り扱いが可能であること、にある。本研究は、これらの特徴を有するデータベースシステムの構築に加え、利用者によって指定された視点に応じて、データベース内に存在する動画像の特徴と、利用者の指定した検索条件との意味的な関係を視覚的かつ定量的に表現した分析ツールを実現し、動画像のデータベースにおけるメタデータの設定・管理における新しい分析環境を提供した.本システムによる電子教材配信を実現するために,主に以下の3項目の研究を行った.
  1. マルチメディア情報を対象にしたアクティブデータベースシステム技術の実現:教材は単純なテキスト情報ではなく,画像や音楽などのマルチメディア情報を含んでいるため,それらを意味的に検索・発見し,履修者に通知可能なアクティブデータベースシステムを実現した.
  2. 理解度別の教材配信ルールの開発: 履修者の理解度別に,提供する情報を変えることで,きめ細かい教材の利用が可能となる.そのために,教材を理解度別に配信するアクティブ・ルールを設計・実装する.
  3. 実験システムによる評価: この段階は,(1),(2),(3) において実現した機構をアクティブ・マルチデータベースシステムとして連結し,塾内に散在する知識情報を対象とした能動的な情報配信の精度,および,システムのスケーラビリティに関する実験を行い,その有効性を検証する.
  4. マルチメディア情報を対象にしたアクティブデータベースシステム技術の実現:教材は単純なテキスト情報ではなく,画像や音楽などのマルチメディア情報を含んでいるため,それらを意味的に検索・発見し,履修者に通知可能なアクティブデータベースシステムを実現した.
実働システムのスクリーンショット
実働システムのスクリーンショット

主要な学術的成果

  1. Yasushi Kiyoki and Xing Chen, A Semantic Associative Computation Method for Automatic Decorative Multimedia Creation with "Kansei" Information, Invited Paper, The 6th Asia Pacific Conference on Conceptual Modeling (APCCM), Wellington, New Zealand, 9 pages, Jan. 20-23, 2009
  2. Shiori Sasaki, Yusuke Takahashi and Yasushi Kiyoki, FUTURISTEXT: THE 4D WORLD MAP SYSTEM WITH SEMANTIC, TEMPORAL AND SPATIAL ANALYZERS, Proceedings of the IADIS e-Society 2008 Conference, Algarve, Portugal, 162--170, April 2008
  3. Wenxing Peng, Taro Terao, Yoshihiro Masuda, Naofumi Yoshida, Jun Miyazaki, Document History System and its Application to Abnormal Document Access Pattern Detection with a Probabilistic Model, In proceedings of 22nd International Conference on Advanced Information Networking and Applications (AINA 2008), 486--493, Mar. 2008
  4. Fujiko Yara, and Yasushi Kiyoki, A Continuous Media Data Rendering System With Sub-Media For Representing The Story Line of Main-Media, The 12th IASTED International Conference on Internet and Multimedia Systems and Applications (IMSA2008), 48--54, Aug. 2008
  5. Shuichi Kurabayashi and Yasushi Kiyoki, A Collaborative and Evolutional Active Rule Network for Dynamic Data on the Web, In Proceedings of The IASTED International Symposium on Distributed and Intelligent Multimedia Systems(DIMS2008), Orlando, Florida, USA, 443--448, November 16-18, 2008
  6. Sahori Imai, Shuichi Kurabayashi, and Yasushi Kiyoki, A Music Database System with Content Analysis and Visualization Mechanisms, In Proceedings of The IASTED International Symposium on Distributed and Intelligent Multimedia Systems(DIMS2008), Orlando, Florida, USA, 455--460, November 16-18, 2008
  7. Shlomo Dubnov and Yasushi Kiyoki: Opera of Meaning: film and music performance with semantic associative search, Information Modelling and Knowledge Bases(to appear), Vol. Vol. XX, pp.20 pages, 2009.
  8. Hideyasu Sasaki and Yasushi Kiyoki: Multimedia Digital Library as Intellectual Property, Mah- bubur Rahman Syed (Ed.) Multimedia Technologies: Concepts, Methodologies, Tools, and Appli- cations (3 Volumes), Vol. Chapter XXIII, No. IGI Press, Hershey, PA, USA., June, 2008.
  9. Xing Chen, Yasushi Kiyoki, Kosuke Takano, and Keisuke Masuda: A Semantic Space Creation Method with an Adaptive Axis Adjustment Mechanism for Media Data Retrieval, Information Modelling and Knowledge Bases, Vol. Vol. XIX, pp.20 pages, May 2008.
  10. Hideyasu Sasaki and Yasushi Kiyoki: Frameworks for Intellectual Property Protection on Mul-timedia Database Systems, Information Modelling and Knowledge Bases, Vol. Vol. XIX, pp.8 pages, May 2008.
  11. Hanako Kariya, Yasushi Kiyoki: Metadata Extraction and Retrieval Methods for Taste-impressions with Bio-sensing Technology, Information Modelling and Knowledge Bases, Vol. Vol. XIX, pp.20 pages, May 2008.
  12. Marie DUZI, Anneli HEIMBURGER, Takehiro TOKUDA, Peter VOJTAS, and Naofumi YOSHIDA: Multi-Agent Knowledge Modelling, Information Modelling and Knowledge Bases, Vol. Vol. XX, pp.18 pages, 2009.