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2009年度学術交流支援資金電子教材作成支援 科目名:メディア技術基礎(ネットワーク・画像処理) 研究代表者氏名:慶應義塾大学 環境情報学部 筧 康明 ykakehi@sfc.keio.ac.jp |
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本電子教材の概要とねらい::
本教材では,デジタル画像処理の基本を扱う。画像処理に関しては,既に多くの文献が出版されているが,その多くはC言語やJavaといった高等プログラミング言語を用いたものであり,初学者にとって敷居が高いという課題も抱えている. 一方,モバイル端末の普及や,PCの低価格化,高速インターネットインフラの形成に伴い,我々の日常の中でも画像に触れる機会は急増している.画像を見るというだけではなく,気軽に画像や映像を撮影し,ネットワーク越しに公開・交換するという行為が自然なものとなっている.さらに,プリクラなど,画像を撮影後加工することを楽しむという文化も見られる.今や,全ての人々はコンテンツの受け手としてだけ存在するのではなく,コンテンツの作り手として活動できる機会が与えられていると言うことも出来る. その中で,デジタル画像処理の基本を,プログラミング言語の初学者に習得させることを目的とする.そのために本教材では,Processingを開発環境として用いる.Processingは非工学者向けのデザインプロトタイピングのためのプログラム環境であり,画像処理のライブラリも用意されているものの,それに関して体系づけてまとめた書籍やウェブはほとんど存在しない.そこで本研究では,Processingを用い,実際のプログラミングを通したデジタル画像処理の概念および基礎スキルの伝達を目的とする. 本電子教材の内容:: 以下のような構成で教材を作成した.それぞれのパートにおいてレジュメとサンプルソースをダウンロード可能にし,さらに課題に取り組む形で自分自身でプログラムを構築することで,画像処理の基礎とプログラミングスキルを習得する. 実際に作成したWebサイトは以下のリンクにある. http://www.xlab.sfc.keio.ac.jp/imagepro_txt/ 第1章:: イントロダクション ・画像処理を取り巻く事象の紹介 ・画像処理技術を用いた研究やアート作品、製品の概説 ・Processingとは ・ソフトウェアのインストール 第2章:: デジタル画像処理とは ・デジタル画像の構成 第3章:: 静止画の読み込みと変換 ・静止画像の読み込み、表示 ・静止画像の変換 ・ヒストグラム作成 ・階調変換 ・サイズ変換 ![]() ![]() 第4章:: 静止画のフィルタリング ・フィルタリングの考え方 ・【フィルタリング入門#1】平滑化 ・【フィルタリング入門#2】エッジ抽出 ・【フィルタリング入門#3】ローパスフィルタ ・【フィルタリング入門#4】ハイパスフィルタ ・【フィルタリング入門#5】輪郭抽出 ![]() 第5章:: 動画像の取り込みと変換 ・動画像の取り込み ・画像間演算の基礎 ・背景差分 ・フレーム間差分 ![]() 第6章:: 動画像からの情報抽出 ・形状認識 ・パターン認識 ・マーカを用いたインタラクション ![]() ![]() 講義の様子と考察:: 本電子教材の流れに沿って,2009年度春学期の月曜2限に講義を行った.40人弱の履修者の多くはプログラミング中級以下であったが,サンプルソースをもとに自身でコーディングを進めることで,基礎を理解し,自分自身の表現にまでつなげる様子が多くの学生に見られた.さらに,本年度の講義では,「未来のデジタルカメラに搭載される機能を実装する」という最終課題に対して,各々がアイディアを出すだけではなく実際に動作するプログラムを実装した. 達成レベルに個人差はあれど,「サンプルソースを見ながら,理論を理解し,自分のアイディアに活かす」という学習サイクルが生まれたことは確認できた.一方で,それぞれが開発したプログラムコードを相互に参照する仕組みが無かったことから,各自のプログラミングスキルのレベルによって最終的なアウトプットに大きな差が生まれた. ![]() ![]() ![]() 今後の展望:: 上記のようにそれぞれの学生の制作したコンテンツを,アーカイブし共有する仕組みがあれば,今後学生が画像処理を利用したインタラクティブシステムを制作するために重要なプラットフォームとなり得る.来年度は,プログラムのモジュールを共有するサービスの開発に取り組みたい. また,Processingで可能な画像処理は,動作速度などの側面から見ても限りがあると言える.より高度な画像処理を学ぶためには,OpenCVなどのC++を利用したライブラリを学習することが望ましい.このような次のステップの学習につなげるための教育ツールに関しても整備していきたい. Copyright (c) 2009-2010, Keio Univ. SFC Yasuaki Kakehi Laboratory. All rights reserved. |