1. 研究課題
  SIVアントレプレナー・ラボラトリー(SIVラボ)では、2002年4月より、SFCを中心とした産学官連携のインキュベーション・ネットワークを構築してきた。また2006年3月にはSFC連携型インキュベーション施設「慶應藤沢イノベーションビレッジ」(SFC-IV)が開設し、SFCにおけるインキュベーションシステムも整いつつある。SFC-IVの今後の発展のためには、SFC-IVのインキュベーションレベルとプレゼンスをグローバルなレベルに高めていくことが重要である。そのための側面支援として、SIVラボは今までのネットワークを発展的に改組する形で、アジアを中心とした世界各地のインキュベーション拠点間の相互連携を目指す。
  グローバルな拠点間連携にあたっては、「誘因と貢献のメカニズム」に関する検証が重要であり、本研究ではそのメカニズムの解明とデザインを目的としている。
  2. 主な研究メンバー
  國領 二郎 (総合政策学部教授) [総括]
  牧 兼充 (政策・メディア研究科博士課程2年) [全体コーディネート]
  千葉 力男 (政策・メディア研究科修士課程1年) [アントレプレナー教育に関する研究]
  田中 克徳 (政策・メディア研究科助教授) [ネットワーキングに関する研究]
  濱本 幸一 (SFC研究所所員) [ベンチャー企業の調査、事務局業務]
  森 靖孝 (SFC研究所所員) [ベンチャー企業のニーズ調査]
  鈴木 明 (SFC研究所所員) [ベンチャー企業のニーズ調査]
  屋代 晃 (総合政策学部1年)[ コンテスト運営に関する調査]
  森 靖孝 (政策・メディア研究科教授) [アントレプレナー教育に関する研究]
  宮地 恵美 (SFC研究所所員) [インキュベーション事例調査]
  樺澤 哲 (政策・メディア研究科教授) [インキュベーション事例調査]
  合  計 11 名 
  3. 主な成果
(A) モデルの検証
  慶應義塾大学SIVアントレプレナー・ラボラトリーをケース・スタディとした分析を行い、インキュベーション・プラットフォームにおける「誘因と貢献のメカニズム」の検証を行った。
  1)大学型インキュベーションシステムのデザインにおけるアーキテクチャに関する考察
  各大学のインキュベーションシステムのデザインにおけるアーキテクチャを4種類に分類し、ケース・スタディ法に基づいて、具体的にどのようにアウトカムが異なるかを明らかにした。特に「大学としての組織的関与」と「インキュベーション活動における冗長性」が反比例の関係であることを示した。その成果を産学連携学会にて発表した。
  2)ベンチャーインキュベーションにおける知的財産のパブリックドメインとプライベートドメインに関する考察
  大学のインキュベーション時に必ず発生する知的財産権について、知的財産をパブリックドメインとプライベートドメインに分類し、それぞれのケースにおいてどのように対応すべきかをケース・スタディ法に基づいてまとめた。特にパブリックドメイン型の知的財産マネジメントは今後のベンチャー育成に重要である点を指摘した。その成果を日本知財学会にて発表した。
  3)アントレプレナー育成を基盤とした大学型ネットワーキングプラットフォームに関する研究
  大学におけるインキュベーション・プラットフォームをどのように構築するかについてケース・スタディ法に基づいてまとめた。SIVアントレプレナー・ラボラトリーをケース・スタディとして、アントレプレナー育成を基盤としたプラットフォーム構築の有効性を示した。特にアントレプレナー育成を基盤とすることでプラットフォームにおける「誘因と貢献のメカニズム」がどのように変化するかを示した。その成果を日本ベンチャー学会にて発表した。
(B) ネットワーキングの構築
  アジアを中心としたインキュベーション拠点間の相互連携を図るため、以下のカンファレンス等に参加し、活動事例の相互共有を中心としたネットワーキングの構築を行った。
  - 第5回産学官連携推進会議
  国内の産学官連携に携わる者が一同に集まるカンファレンス。6月に京都にて開催。
  - REE Asia 2006
  アジアの各大学のアントレプレナー教育担当者が一同に集まるカンファレンス。6月にタイ・バンコクにて開催。
  - APEC-TIC 100
  アジア太平洋のアントレプレナー育成関係者が集まるカンファレンス。8月に台湾にて開催。
  - REE USA 2006
  米国の各大学のアントレプレナー教育担当者が一同に集まるカンファレンス。10月にStanford大学にて開催。
  - The Fourth Annual Global CONNECT Meeting
  UC San Diegoが中心となった世界中のインキュベーション拠点の相互ネットワークであるGlobal CONNECTのAnnual Meeting。12月にカナダ・トロントにて開催。
(C) 連携モデルの構築
  インキュベーション拠点間の相互連携を推進するための具体的な手法を検討した。
  - Global Business Intersection
  遠隔会議システムを活用した、ビジネスプランの発表と相互ブラッシュアップの仕組み。2006年11月のOpen Research Forum 2006において、慶應義塾大学とシンガポール国立大学の2拠点間の参加による実験を行った。
  - Idea to Product International Competition 2006への参加
  University of Texas Austin校が主催するビジネスプランコンテストの前段階として、プロダクトのマーケッタビリティを競うコンテスト。このコンテストにSIV 
  Business Idea Contest 2005の特別賞を受賞し、その後慶應藤沢イノベーションビレッジに入居している株式会社音力発電の速水浩平君を推薦し、部門3位を獲得した。
  - Innovation Challenge
  世界中の各大学の参加者が相互にInnovationとCreativityを競うコンテスト。慶應義塾大学から7チーム参加した。
  4. 研究成果の発表等
- 牧 兼充、大学型インキュベーションシステムのデザインにおけるアーキテクチャに関する考察、産学連携学会第4回大会、2006年6月
  - 牧 兼充、ベンチャーインキュベーションにおける知的財産のパブリックドメインとプライベートドメインに関する考察、日本知財学会第5回年次学術研究発表会、2006年6月
  - 牧 兼充、アントレプレナー育成を基盤とした大学型ネットワーキングプラットフォームに関する研究、日本ベンチャー学会第9回全国大会、2006年11月
  5. 達成点と今後の展開
  今年度1年間の活動を通じて、海外のインキュベーション拠点とのネットワーキングと連携モデルの構築が完了した。2008年のグローバルコンテスト開催を目指し、2007年度はこの活動を更に広げていく予定である。