日本の歌謡界は『紅白』によって代表されてきた。「国民行事」とまで言われたかつての勢いはないにしても、大晦日の恒例番組として定着しているのは事実であり、文化的価値はもとより音楽産業に与える影響力は今なお絶大である。すべての視聴者に喜ばれる番組提供を目指すNHKとしては、どのジャンルからも万遍なく出場歌手を選出することを目指しているものと考えられる。しかし邦楽において「ジャンルが喪失した」と言われて久しい。ではどのように選考を行うべきなのであろうか。
本稿はそのソリューションを探るべく、社会調査データを解析した。用いたデータは2005年の出演者選考のために4媒体を用いてNHKが実施したアンケート調査「スキウタ」である。解析の結果、視聴者ニーズを構造化することによってボトムアップ的に領域が生成され、それらはジャンルなき現代における一つのジャンル構築法を提示するものであった。本稿の入力データはスキウタにおける4媒体の得票であったが、この解析方法は入力データ列が増えても対応できる汎用性をもっているため、多様性に即した入力データを用いることにより、より精緻な邦楽のカテゴリー化が実現できることが示唆された。
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