2006年度 森泰吉郎記念研究振興基金 成果報告書

NHK紅白歌合戦と邦楽ストラクチャー
〜スキウタ調査結果(2005)のデータマイニング〜

慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 後期博士課程
小野田哲弥


 

 研究課題


 日本における『NHK紅白歌合戦』(以下、『紅白』)の社会・文化的価値は大きく、多角的に研究されて然るべき重要課題である。本研究では、2005年の『紅白』を前に、その出演者選考のために実施された社会調査「スキウタ」に焦点を絞り、その評価を通じて、マーケティング的観点から『紅白』の将来像を戦略的に検討する。

 「スキウタ」の評価は、(1)調査方法、(2)調査結果の2点から行う。それぞれに対して、筆者のこれまでの成果である(A)データクリーニング、(B)極度多様化事象の解析のモデルを適用する。(A)によって調査媒体の性質と補正方法を明らかにし、(B)によって邦楽本来の多様な構造を明らかにし、実際の出演者リストと比較する。これらの検証によって、『紅白歌合戦』の現状課題を明らかにし、将来的展望を目指す。

 



 成果論文要旨


 日本の歌謡界は『紅白』によって代表されてきた。「国民行事」とまで言われたかつての勢いはないにしても、大晦日の恒例番組として定着しているのは事実であり、文化的価値はもとより音楽産業に与える影響力は今なお絶大である。すべての視聴者に喜ばれる番組提供を目指すNHKとしては、どのジャンルからも万遍なく出場歌手を選出することを目指しているものと考えられる。しかし邦楽において「ジャンルが喪失した」と言われて久しい。ではどのように選考を行うべきなのであろうか。

 本稿はそのソリューションを探るべく、社会調査データを解析した。用いたデータは2005年の出演者選考のために4媒体を用いてNHKが実施したアンケート調査「スキウタ」である。解析の結果、視聴者ニーズを構造化することによってボトムアップ的に領域が生成され、それらはジャンルなき現代における一つのジャンル構築法を提示するものであった。本稿の入力データはスキウタにおける4媒体の得票であったが、この解析方法は入力データ列が増えても対応できる汎用性をもっているため、多様性に即した入力データを用いることにより、より精緻な邦楽のカテゴリー化が実現できることが示唆された。

 



 成果論文


スキウタ集計結果のデータマイニング
-NHK紅白歌合戦に関する視聴者ニーズの構造化-

http://www.mag.keio.ac.jp/~ond/mori/2006/sukiuta.pdf