2007年度森泰吉郎記念研究振興基金 研究者育成費 成果報告書
【研究課題名】徳島県議会選挙における「とくしまマニフェスト」の実態調査
慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科
修士課程1年 学籍番号80724956
丹 下 大 輔
政策形成とソーシャルイノベーション(PS)
パブリックポリシー(合意形成)
【研究の目的と概要】
修士論文における研究テーマを「政党支部マニフェストがもたらす地方議会改革〜『とくしまマニフェスト』の考察〜」と設定する。この研究テーマに基づく研究の目的と概要は以下の通りである。
現在、地方議会を取り巻く課題として、二元代表制における地方議会のレーゾンデートルが問われる中(北川2007)、地方議会の本来的役割とこれに伴う議
会改革が問われている。また、地方議会とりわけ都道府県議会において議会内が政党化する中(村松,伊藤1986)、また、分権という潮流の中(大森2000)、政党の地方組織(政党支部)と地方議員の関係性、また、政党の地方組織の在り方が従前より増して問われている。
これらの背景に加え、地方議会マニフェストの登場により、その意義が問われている。実質的な執行権、予算編成権は首長専権事項であり、地方議会はその権限を持っていないため(西尾2003)、地方議会マニフェストの「限界と可能性」を明らかにすることが求められている。また、地方議会マニフェストにおける「政策の継続性と責任性」の担い手を明らかにする必要性がある。
以上の背景と課題から、本研究は政党の地方組織(政党支部)が策定段階より主導的役割を果たし、住民協働の策定過程、あるいは策定後も政策の継続性を担う動向がみられる、民主党徳島県総支部連合会(以下民主党徳島県連)が策定した「とくしまマニフェスト」のマニフェスト策定過程、そしてマニフェスト策定後の政策項目実現に向けた動向を事例分析、考察することにより、政党における地方組織の役割と可能性と、地方議会マニフェストの実行性を明らかにすることを目的とする。また、政党支部マニフェストが地方議会改革への新たなアプローチとしての有用性を提言することを目指す。
また、本研究で問われている課題として@地方議会マニフェストの策定意義、A地方議会マニフェストにおける「限界と可能性」、B政党における地方組織の役割、Cマニフェスト策定過程でみられる政党支部における地域固有課題の抽出方法分析、C政党支部マニフェストにおける政策の継続性の意義と政策の責任性、以上4点が挙げられる。これらの課題を民主党徳島県連が主導的役割を果たし策定した「とくしまマニフェスト」の策定過程、策定後の動向と実行体制を事例分析することにより明らかにする。また、これらを明らかにした上で、政党支部マニフェストを用いた地方議会改革を述べることとする。
以上が修士論文の研究テーマに対する目的と概要である。これを前提とし、事例分析、考察に用いる民主党徳島県連が策定した「とくしまマニフェスト」を、森泰吉郎記念研究振興基金研究者育成費(以下森基金)を活用し実態調査を試みた。このことから、森基金における研究課題名を「徳島県議会選挙における『とくしまマニフェスト』の実態調査」と設定した。
当初、森基金申請時は、徳島県議会議員選挙において「とくしまマニフェスト」が住民にどの程度浸透し、投票行動の結果として得られた成果を明らかにすることを目的とした。しかしながら、都道府県議会における政党化が進展する中、政党における地方組織の役割とは、政党支部と現職県議との連携を強化し、政党支部による調査、研修、討論、政策立案、宣伝パンフの作成、浸透行動を企画し、現職議員と共に行動、協力することによりマニフェスト実現に向けた議員活動の保証(議会事務局に代わるシンクタンクの役割)をすることである。そこで、政党支部が主導的役割を果たし、住民協働を目的とした「とくしまマニフェスト」策定過程、さらに、徳島県議会議員選挙に民主党徳島県連が果たした役割を明らかにすることを目的とする。
政党の地方組織のサポート体制を、都道府県議会議員選挙とりわけ徳島県議会議員選挙を事例として調査することにより明らかにする。また、徳島県議会議員選挙において用いた「とくしまマニフェスト」の策定過程も明らかにし、民主党徳島県連が果たした役割を述べる。
森基金の研究課題名である「徳島県議会選挙における『とくしまマニフェスト』の実態調査」の活動内容は以下の通りである。
【研究手法と活動概要】
本研究における主たる研究手法としてフィールドワーク、とりわけインタビューを中心とした手法を用いた。インタビュー対象は、「とくしまマニフェスト」策定過程において現地現場にて行動し、地方固有の課題の抽出を行った民主党徳島県連幹部、衆議院議員秘書とした。また、「とくしまマニフェスト」を用いて県議選を展開された現職県議会議員も対象とした。さらに、自ら「とくしまマニフェスト」策定過程、県議選に関わっていた為、その際の資料等も含め調査した。
修士論文研究テーマである「政党支部マニフェストがもたらす地方議会改革〜『とくしまマニフェスト』の考察〜」の研究遂行のため、森基金の研究課題である「徳島県議会選挙における『とくしまマニフェスト』の実態調査」の取組内容を述べる。活動概要は以下の通りであり、時系列的に述べる。
【活動概要】
@「とくしまマニフェスト」実現に向けて〜まずは議会基本条例から〜
●開催日:2007年6月1日(金)18:30~
●場 所:徳島県徳島市ふれあい健康館にて
●講 師:三重県議会議員 会派新政みえ代表 三谷哲央氏
徳島県において「とくしまマニフェスト」に掲げた「徳島県議会基本条例」を実現するため、現職議員、政党支部スタッフ等を対象とし、外部講師として三重県議会における議会基本条例制定を目指し議員活動をされた三谷氏を講師として招き、議会基本条例における三重県の取り組みを中心とした政治スクールに参加をした。主催は民主党徳島県連で、「とくしまマニフェスト」策定において重要な役割を担った政治スクールである「民主・仙谷塾」の延長線上に位置されるものである。この政治スクールに参加することにより、三重県議会における議会基本条例の策定過程、地方議会改革、そして「とくしまマニフェスト」策定後の徳島県議会における議会改革の進捗具合と、議会改革のアプローチとして議員提案条例の活用手法を主とした活発な意見交換、ディスカッションがなされた。
この政治スクールの参加により、本研究における、「とくしまマニフェスト」の進捗具合、徳島県議会と民主党徳島県連の動向調査を行うことができ大変参考となるものとなった。
A「マニフェスト・シンポジウム&スクールin東北」
「お願い」から「約束」へ、東北からマニフェスト革命進化論!
●開催日:2007年9月29日(土)13:00〜30日(日)17:00
●場 所:山形県山形市「霞城セントラル」
スクール 23階高度情報会議室・シンポジウム 3F大会議室
●主 催:マニフェスト・スクール東北実行委員会
●共 催:ローカル・マニフェスト推進地方議員連盟
●後 援:ローカル・マニフェスト推進ネットワーク東北
ローカル・マニフェスト推進ネットワーク山形
社団法人日本青年会議所東北地区山形ブロック協議会
早稲田大学マニフェスト研究所
[マニフェスト・スクール〜研修会の目的 〜]
■ マニフェスト型政治における地方議会・議員の役割、地方議員のローカル・マニフェスト活用方法に関する体系的な知識の習得
■ 地方議員に必要な政策立案・構想能力の涵養
■ マニフェスト型政治における有権者の政策選択のための、マニフェストの読み方、活用方法について学ぶ
〜研修会プログラム〜
【スクール】
9月29日(土)
第一講座 大西 一史(LM地議連共同代表・熊本県議)地議連の活動に関して
13:00〜13:45
第二講座 松野 豊(千葉県流山市議)会派マニフェスト作成の実践事例13:45〜14:45
第三講座 佐藤 邦夫(岩手県奥州市議)議員提案条例の実践事例 15:00〜16:00
第四講座 佐藤 奨(河北新報記者)メデイアから見る地方議会16:00〜17:00
9月30日(日)
第五講座 北川正恭(早稲田大学大学院教授)地方議会活性化とマニフェスト作成の意義
9:30〜11:00
第六講座 山本 啓(東北大学大学院教授)東北におけるローカル・マニフェスト
11:00〜
[シンポジウム]
9月30日(日) 14:00〜17:00
●開会挨拶 LM地議連
●基調講演 北川正恭氏「マニフェスト進化論 〜地域から変える第二期分権改革〜 」
●パネルディスカッション
・アドバイザー 北川正恭氏
・コーディネーター 和田明子氏(LMN山形発起人・東北公益文科大学准教授)
・パネリスト 佐藤正廣氏(JC山形ブロック協議会地域政策委員長)
・佐藤丈晴 (LM地議連共同代表・酒田市議)
●パネルディスカッションテーマ
『「お願い」から「約束」へ、東北からマニフェスト革命進化論!
〜 東北から日本を俯瞰する 〜』
・テーマ@ 統一地方選挙、参議院選挙を振り返って
・テーマA マニフェストが地域にもたらすもの
・テーマB マニフェスト・サイクルを活かすために
・テーマC 市民の政治参加の在り方
山形県において「マニフェスト・シンポジウム&スクールin東北」が開催されたため、これに参加し、講演、事例報告を確認した。本研究では地方議会マニフェストを扱うため、基本的知識の確認と、全国各地域での取り組みを情報収集することが必要であるが、このマニフェスト・スクール&シンポジウムにおいてその確認と情報収集が可能となり、大変参考となった。
B第2回マニフェスト大賞授賞式参加
●開催日:2007年11月9日(金)
●場 所:六本木アカデミーヒルズ49階 タワーホテル
●主催者:ローカル・マニフェスト推進地方議員連盟
ローカル・マニフェスト推進首長連盟
共 催:早稲田大学マニフェスト研究所
ローカル・マニフェスト推進ネットワーク
協 力:NPO法人ドットジェイピー
日本インターネット新聞株式会社
後 援:毎日新聞社
本研究テーマであり、考察、事例分析で用いる「とくしまマニフェスト」が、第2回マニフェスト大賞にて、グッド・マニフェスト賞(政党支部部門)を受賞した。そのため、授賞式に参加した。また、マニフェスト大賞授賞式にて各地域のマニフェストの取り組み事例等も発表され、本研究においても大変参考となるものとなった。上記のある写真資料はマニフェスト大賞の模様と、「とくしまマニフェスト」が受賞した「グッド・マニフェスト賞」のトロフィーである。
C「とくしまマニフェスト」実態調査
●日 時:2007年11月15日(木)〜17日(土)
●場 所:徳島県徳島市 民主党徳島県総支部連合会事務所・衆議院議員仙谷由人事務所
徳島県において、「とくしまマニフェスト」策定過程、徳島県議会議員選挙における「とくしまマニフェスト」の活用方法と住民への影響力を、関係者の方へのインタビューを実施した。インタビュー実施対象は、民主党徳島県連幹部、衆議院議員秘書である。インタビューの内容として、「とくしまマニフェスト」策定過程において地方固有の課題の抽出方法、あるいは策定過程における「民主・仙谷塾」の全貌、「とくしまマニフェスト」HPの内容、「とくしまマニフェスト」の策定へ至った経緯、現時点でのマニフェスト進捗具合と今後の展望とこれに基づく民主党徳島県連の動向等である。このインタビューによって具体的な記述データ収集が可能となった。
また、「とくしまマニフェスト」を用いて県議選を展開された現職県議会議員にもインタビューの対象とし実施した。インタビューの内容として、「とくしまマニフェスト」をどのように活用し県議選を展開したか、あるいは「とくしまマニフェスト」策定後、県議会において実現への動きを見せているかといった具体的な徳島県議会の動向を把握することができた。上記のある写真資料は、徳島県議会議員選挙に使用された「とくしまマニフェスト」の幟旗、ポスター、そして「とくしまマニフェスト」を住民に訴える街頭演説の模様である。この「とくしまマニフェスト」の実態調査で得られた記述的データ、資料等は来年度実施する修士論文にて使用することとする。
D徳島県上勝町「いろどり」事業視察
●日 時:2008年2月12日(火)〜13日(水)
●場 所:徳島県上勝町
徳島県上勝町において、「とくしまマニフェスト」にある「すべては、子供たちのために」というコンセプトの象徴的事例である「いろどり」事業を視察した。この視察により、マニフェストのコンセプトを理解し、マニフェストを実現し如何なる地域社会を目指していくかという方向性も把握することにより、「とくしまマニフェスト」の基本軸を理解することが可能となった。上記のある写真資料は木質バイオマスエネルギー、「いろどり」事業における作業風景、34項目のゴミ分別とゴミゼロ宣言の模様である。これらの視察調査で明らかになったことは来年度の修士論文で用いることとする。
【森木金研究助成金の活用報告】
森基金から受けた研究助成金をもとに、本研究において上記の活動概要で示した通り、「とくしまマニフェスト」に基づいた関係者へのインタビュー、徳島県上勝町への視察、マニフェスト・スクールへの参加、マニフェスト大賞授賞式への参加等の航空旅費、鉄道旅費、参加費に利用した。具体的活動概要は上記の通りである。また、本研究における活動概要で得られた成果、記述的データ等は来年度に実施する修士論文へ反映する。
【修士論文研究計画書】
修士論文における研究計画書を載せる。この研究計画書は2008年1月時点のものである。
政党支部マニフェストがもたらす地方議会改革
〜「とくしまマニフェスト」の考察〜
研究の目的
現在、地方議会を取り巻く課題として、地方議会の本来的役割と議会改革、また、政党の地方組織の在り方、そして地方議会マニフェストの登場により、その意義が問われている。そこで、本研究は政党支部が策定段階より主導的役割を果たし、住民協働の策定過程がみられる「とくしまマニフェスト」の事例を用いて、政党支部マニフェストが地方議会改革への新たなアプローチとしての有用性を提言することを目指す。
「とくしまマニフェスト」より、地方議会におけるマニフェスト策定の意義、さらに策定過程を追う事により地域固有課題の抽出方法を分析する。併せて、政党における地方組織の役割と、マニフェスト策定との整合性や地方議会の本来的役割、これに基づく議会改革を明らかにする。
地方議会とりわけ都道府県議会において議会内が政党化する中、また、分権という潮流の中、政党支部の役割と地方議員の関係性は従前より増している。これらの問題意識から政党支部マニフェストへ着目した理由である。
先行研究と研究の位置付け
地方議会に対する先行研究として議会の役割という観点からの指摘がある。「地方議会における本来の役割と機能を果たしていない最大の原因は、地方議会が総じて「八百長」をやっている。議会開会前に予算案や条例案など執行機関が議会側に提案する議案について事前に根回しを行い、多数会派(与党)の了承を得た上で議会を開会する。政策選択とその評価を巡り透明化と説明責任を求める場である議会が、八百長と化すことにより実質その機能を失っている」(片山2007)との指摘がある。また、「21世紀の政治は『公開と説明』である。『熟議の民主主義』を目指し、審議の議論を公開して法案の内容と、必要性を説明するというオープンな場での徹底的な政策論争が必要である。また、国民に選択肢を提示し、徹底的な議論を通して合意形成を図っていく。」(仙谷2007)という先行研究の指摘から、地方議会は住民に対する政策を軸とした選択肢を必要とすると共に、首長と議会、また議員間討議を通じて政策の優先順位を決定することである。
次に、地方議会におけるマニフェストの先行研究である。「議員マニフェストにおける最大の意義として住民協働によるマニフェスト策定プロセスが挙げられる。」、「住民協働により多元的な民意を吸収できるのみならず、それらの民意を政策化していく過程で、政策の「編集能力」が鍛えられる。」との指摘がある。また、「住民への説明責任を果たしながら議員間の合意形成を促進し、議員間討議を促進させながら議会としての政策立案機能を向上させる為のツールとしてマニフェストを活用する」(西尾2005)との指摘がある。この先行研究からマニフェスト策定過程において住民協働が最大の意義であり、この事を通じて、政策の優先順位を住民に説明責任と情報公開を果たしながら作成することの重要性とマニフェストを用いた政策提案型の地方議会が求められている。
最後に政党と地方議員に対する先行研究を挙げる。地方議員の政党との関係として「地域社会の人口規模の増加、産業構造の高度化するほど政党化が進む」(村松1986)との指摘がある。また、地方議会議員の代表制モデルとして「政党政治モデル」(市川2005)の指摘もある。これは、「政党の地域支部が発達しており、各地域支部がその豊富な活動家の中から有能な人材を候補者としてリクルートできる事が重要」として、「しかし、現実の政党活動を見ると政党による議員活動のサポートは極めて貧弱である。このモデルに適合的な態度をとるのは公明党と共産党である。政党は、議員の情報収集や政策提案を制度的にサポートする必要がある。」とした政党と政党支部の役割についての指摘もなされている。このことから地方議員の政党化と政党における政策的争点の明示による責務が果たされなければならない。
以上の先行研究より本研究の位置付けとして、先行研究より本研究テーマである政党が策定段階より主導的役割を果たし、住民協働の策定過程が存在する政党支部マニフェストが議会改革のツールとして、政党支部のサポート体制の充実によって有用である事を位置付ける。具体的には、事例分析として「とくしまマニフェスト」を用いて考察する。
研究の対象と仮説
本研究はマニフェスト策定過程において住民協働で練り上げ、地方議員の政党化という観点からも「政党支部マニフェスト」、とりわけ「とくしまマニフェスト」を対象とする。また、「とくしまマニフェスト」を策定後の変化を分析するため徳島県議会も対象とする。
本研究におけるリサーチクエスチョンとして、「政党支部マニフェストは議会改革へのツールとして機能するか」と設定する。リサーチクエスチョンに対する仮説として「政党支部と現職県議との連携を強化し、政党支部によるサポート体制、調査、研修、討論、政策立案、宣伝パンフの 作成、浸透行動を企画し、現職議員と共に行動、協力することによりマニフェスト実現に向けた議員活動の保証(議会事務局に代わるシンクタンクの役割)をする。従って、現職議員は議員活動のエネルギーの方向性を議会改革へ足並みをそろえる事が出来る」という仮説を立てる。
研究の枠組みと手法
研究手法としては、「とくしまマニフェスト」策定過程を時系列的に捉え、マニフェスト策定過程を分析する事により特徴を明らかにする。(表1)。
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「とくしまマニフェスト」事例分析(表1) |
@ |
マニフェスト策定へ至るプロセス |
A |
「とくしまマニフェスト」策定プロセス(a) ⇒4点に分類しマニフェスト策定における傾向抽出 |
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⇒ 4点に分類し事例分析しマニフェスト策定における傾向抽出 |
B |
マニフェスト型選挙(徳島県議会議員選挙) |
C |
徳島県議会でのマニフェスト実現プロセス |
D |
徳島県議会と住民の変化 |
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(a)「とくしまマニフェスト」策定プロセス |
T |
民主・仙谷塾 (議員資質向上と先進事例抽出勉強会) |
U |
住民との意見交換会・パブリックコメント |
V |
地方固有の問題点の抽出手法と住民の意見集約プロセス |
W |
先進地域への視察事例 |
X |
「とくしまマニフェスト」策定委員会 |
次に、本研究で問われている課題として@地方議会マニフェストの策定意義、A地方議会マニフェストにおける「限界と可能性」、B政党における地方組織の役割、Cマニフェスト策定過程でみられる政党支部における地域固有課題の抽出方法分析、C政党支部マニフェストにおける政策の継続性の意義と政策の責任性、以上4点が挙げられる。これらの課題を民主党徳島県連が主導的役割を果たし策定した「とくしまマニフェスト」の策定過程、策定後の動向と実行体制を事例分析することにより明らかにする。また、これらを明らかにした上で、政党支部マニフェストを用いた地方議会改革を述べることとする。その手法として(表1)より得られた分析結果を用いて明らかにする。ひいては議会改革のアプローチとして、政党支部マニフェストは有用である事を述べる。
上記に掲げた仮説の妥当性、また本研究の課題である5点を検証するため、「とくしまマニフェスト」のフィールドワークを実施する。具体的には「とくしまマニフェスト」策定実行委員会で関わった国会議員、現職地方議員、事務局等、そしてマスコミ各社にインタビューを行う。
また、「とくしまマニフェスト」の進捗具合を調査する。マニフェストに掲げた教育、医療、子育て、第一次産業、中小企業対策、議会改革における項目の進捗具合と実施状況をヒアリングと現地調査によって明らかにすることにより、県連と現職議員の政策形成過程を考察し、徳島県議会の議会改革を述べる。
具体的には以下の通りである。
@本研究において具体事例で用いる「とくしまマニフェスト」のフィールドワークを実施
●民主党「とくしまマニフェスト」策定実行委員会メンバーへのヒアリング
◎衆議院議員仙谷由人氏(策定実行委員会委員長)
◎参議院議員中谷智司氏(策定実行委員会事務局長)
◎徳島県議会議員、民主党徳島県連、仙谷由人秘書
ヒアリングの実施により、「とくしまマニフェスト」策定過程、「民主・仙谷塾」の運営実態、策定過程における合意形成過程、県連主導のマニフェスト策定に対する現職議員の考え、徳島県における地方議会選挙へのマニフェストを用いた選挙戦等に対する意見を拝聴することにより、住民協働、議員資質向上の学習会(「民主・仙谷塾」)を通じ、合意形成を目指したとくしまマニフェストの実態を明らかにする。
●マスコミ各社へのヒアリング
◎徳島新聞社、四国放送
●「とくしまマニフェスト」進捗具合調査
マニフェストに掲げた教育、医療、子育て、第一次産業、中小企業対策、議会改革における項目の進捗具合と実施状況をヒアリングと現地調査によって明らかにする。
研究の意義
地方議会の役割として首長との間に緊張関係と相互抑制関係を前提とし、民意の代表機関として期待される。とりわけ、行政に説明責任を問う、執行部に対するチェック・監視機能、政策立案機能(代替案や独自案の提示)が重要な機能として役割遂行が求められる。
この事を「とくしまマニフェスト」という一例をもって明らかにしていくことで、政党支部がマニフェスト策定や政策提言に積極的に参加し、マニフェスト策定後も議員活動を保障するサポート制度を政党支部内で整備していくことにより、新たな議会改革のアプローチとなることが期待される。
今後の課題
本研究における今後の課題として、「とくしまマニフェスト」の策定過程と議会改革の因果関係を明確化することである。また、これに基づく仮説の検討を行う必要性がある。さらに、政党の地方組織の在り方、そして地方議会改革を明らかにし、政党支部マニフェストの実行の担保も明らかにする。そのため、今後も「とくしまマニフェスト」策定過程、策定後の徳島県議会と民主党徳島県連の動向を追う事とする。
【参考文献】
村松岐夫,伊藤光利著「地方議員の研究 『日本的政治風土』の主役たち」(日本経済新聞社 、1986)
北川正恭「マニフェスト進化論 地域から始まる第二の民権運動」(生産性出版、2007)
佐々木信夫「自治体をどう変えるか」(ちくま新書、2006)
大森彌編著「分権時代の首長と議会 : 優勝劣敗の代表機関」(ぎょうせい 、2000)
大森彌「分権改革と地方議会」(ぎょうせい、2002)
UFJ総合研究所編「ローカル・マニフェストによる地方のガバナンス改革」(ぎょうせい、2005)
西尾真治「マニフェスト政治と地方議会・議員の刷新〜マニフェスト政治のアクセラレーターとしての地方議会・議員への期待」(UFJ Institute REPORT、2005)
片山善博「改革派知事待望は水戸黄門幻想だ」(中央公論、2007 4月号)
片山善博「八百長議会の清算を」(世界、2008年 1月号)
仙谷由人「今こそ『熟議の民主主義』を」(朝日新聞、2007年11月14日朝刊 私の視点より)
市川喜崇「地方議会と代表」(同志社法学54巻4号、2005)
大橋松行「地方分権時代の地方議会」(同志社法学59巻2号、2007)
三重県議会事務局「三重県議会の改革 三重県議会の基本理念〜分権時代を先導する議会をめざして〜」(2005)
民主党徳島県連大会2006 議案書(2006)
民主党徳島県連大会2007 議案書(2007)
とくしまマニフェスト2007 HP http://www.dpj-tokushima.jp/manifesto/
とくしまマニフェスト2007「すべては子供たちのために」 解説・参考資料
民主・仙谷塾 第1回〜第7回 議事録
民主党「とくしまマニフェスト」策定実行委員会 資料
衆議院議員仙谷由人HP http://www.nmt.ne.jp/~sengoku/
民主党徳島県連HP http://dpj-tokushima.jp/