研究課題名：脱北者に対する韓国政府の政策とNGOの役割

氏名：李暁旻（リーヒョミン）

所属：Global Governance and Regional Strategy(GR)

 

 

研究成果報告書

 

 

最初、著者が取っていた本研究の視点は、脱北者に対するNGOの役割とその実績を肯定的に評価するということであった。つまり、政府の脱北者政策は限界があると指摘し、政府が持っている脱北者支援の権限―政策作り、予算決定等等―をNGOにもっと譲渡するべきだと思っていた。しかし、本研究を進めて行くうちに政府の苦しい立場や政府がなぜもっと全幅的支持を脱北者に与えられないのかについて理解するようになった。この報告書は韓国政府の脱北者に対する政策の変化とその原因を曝け出すのをその目的とする。

北朝鮮の共産体制に絶えず、北朝鮮から逃亡して来る人たちを脱北者と呼ぶ。脱北者は、主に中国と韓国の東北アジアと台湾の東南アジアなどの地域に広く分散している。お金を貰って脱北者を手伝い、脱北の経路と計画を立ててくれるブローカーが登場するほか、あらゆるNGOが脱北と脱北者の後援をしているのが現状である。しかし、予算に限界があるNGOの場合、莫大なお金がかかる支援活動を続けられなくなる場合が少なくない。

非政府機構というNGOの本当の意味が恥らうほど、NGOは政府の支援なしには活動の出来ない組織である。北朝鮮の悲惨な状況を知っている韓国の政府は今までかなり寛大な態度を見せてきた。

その内容を見て見ると、一月最終賃金の２００倍範囲ないで支援される支援金と住宅賃貸に必要な住居支援金を含め、脱北者の定着支援金は一人当たり３千５９０万ウォン、二人家族当たり４千５５５万ウォン、３人家族当たり５千５１１万ウォン、４人家族当たり６千４６６万ウォンなどである。受け方の脱北者の立場では足りない金額だと思うけど、政府としては国内貧困層に対する福祉水準を考慮しなければならない。しかも、定着支援金の大体が脱北者本人の韓国国内入国費用や家族の後続脱北を推進するための費用として利用され、結果的にブローカーの欲張りを満たす手段として使用されているという点は定着支援金が真の機能を発揮してないという批判に繋がれるしかない。

また、政府は脱北者の教育機会の保証のためにあらゆる特例を付与しているにもかかわらず、脱北者は個人の能力を考慮せず、‘入学してから考えよう’という安易な考えで学校に入り、その後すぐに休学し就職適齢期を見逃す場合が頻繁である。

従って、訳もなく無条件に支援するということが脱北者のためではないということを知って、脱北者が韓国社会に立派に適応するように就職の機会を拡大し自ら食べて生きていける自活の意志を育ててあげることが必要なのである。

脱北者の定着支援金は金泳三政権時は一人当たり６７１万ウォン程度に過ぎなかったのが、金大中政権に入り４倍以上引き上げられた２千７５７万ウォンに増額されたのである。これは、金大中大統領の太陽政策による増額であって、政権が変えられると続けられないことに間違いないことであった。

最近になって、脱北者に対する政策は変化を遂げている。北朝鮮を脱出した人たち（脱北者）に対して何の制限なしで入国を許可していた韓国政府の脱北者政策が急変している。パンキムン（潘基文 ）外交通商部長官は, 流離う脱北者の問題と企画脱北などの問題をNGOでやり遂げられない場合に限って、政府に責任を着せるのは極めて迷惑であることを指摘した。パン長官の発言と同じ脈絡でチョントンヨン（鄭東泳）統一部長官は、‘一部の団体が脱北を助長するとしたら対北朝鮮の和解と協力政策には附合しない’と言ってNGOの自制を促したのである。したがって、これからのNGOが関与する脱北者の集団入国が選別的に行われるか、入国自体が難しくなる可能性もゼロではないように見える。

こういうような政府の立場表明は、北朝鮮の外務省が韓国のNGOの脱北支援を国際的な人身売買行為と言及した後のことである。つまり、北朝鮮が脱北者問題に敏感に反応するに連れ、少なくともNGOが脱北を誘導・助長することはなくするという政府の意見である。脱北を支援することは脱北者の人権を保護する問題であるつつ、対外的にみると政府としては南北関係の進展には極めて危ういことであるという現状である。

 

ここで著者が示したい問題意識は、協力し合えなければならない政府とNGOの間に葛藤が生じているという点である。上記のように、国の政策がNGOの活動を不法に認めると脱北者の人間としての権利は一体どうなるのか。反対に、北朝鮮が人身売買にまで罵倒したNGOの脱北支援をそのまま認めてしまうと南北関係の改善は極めて難しくなるに間違いない。この問題の解決点を研究するのが著者のこれからの課題である。

 

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