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担当教員:: 慶應義塾大学 環境情報学部 准教授 筧 康明


本研究の背景と目的::
 本講義オープンデザイン実践では、ハードウェアおよびソフトウェア・物理素材を交えたものづくりを通してインタラクションデザインの習得および、オープンコミュティを意識したノウハウやプロダクトのシェアの方法論について実践を通した学習を目的とする。インタラクションデザインの分野において、より多くのデザイナーやエンジニアの参加を促すために、つくり方の共有や、コラボレーションを通した制作、利用者からの積極的なフィードバックの仕組みづくりの重要性が高まってきている。本講義では、このような背景に伴い、オープンソースの考え方・仕組みおよびオープンソースに基づいて、インタラクションデザインの実践を行う。オープンソースシステムの概念の普及や開拓を先導するMozilla Japanと連携しながら講義を展開する。

 その中で、申請者らは、ものづくりの過程を記述し、アーカイブあるいは共有のためのプラットフォームFabble(gitFAB)を開発してきた。3D プリンタやレーザーカッターなどの Digital Fabrication ツールや Arduino などの電子工作ツールが市場に提供されはじめ、椅子や机などのクラフト製品をはじめ、電子的な入出力を伴ったデバイスの制作も多数提案されている。これらはウェブ、そしてウェブ上で展開されているオープンソースソフトウェアの文化の影響を色濃く受けており、ソースコード・部品・ツール・設計図・回路図や制作過程日誌などを公開している作品も多い。オープンソースソフトウェアが質・量・多様性全てにおいて発展してきたのは、ソースコードやノウハウを共有することにくわえ、再利用性の高さから複製やフォークなどが比較的容易だったことが要因の一つであると考えられる。現状のオープンソースハードウェアでも設計図や制作過程をオープンに共有することが普通になってきているものの、その複製やフォークを実現することについてはあまり踏み込んでいない状況に見える。特にハードウェアは、ソフトウェアのみの場合と違ってさまざまな素材の違う部品で構成されることも多い。データのダウンロードと出力だけでは複製することはできず、適切な工作や組み立てなどが必要である。そのため、制作過程をサポートするドキュメントが手がかりとなり、可読性や再利用性がハードウェアの複製とフォークの実現に対して重要であると考える。

 本講義では、このFabbleを受講者の日誌・課題管理・そしてフィードバックのためのツールとして利用するために、サービスの改良および運用実験を行う。昨年度の同講義でもフィージビリティスタディとして、Fabbleの初期バージョンを用いて受講者のアイディアの共有についての実践を行い、マウスのパーソナルニーズに合わせたカスタマイズというテーマのもとで最終的な成果物を展示するところまで行った。具体的に多くのアイディアやノウハウを共有することができたが、その際、サービスのユーザビリティに関する不満や、システムの動作不備、またフィードバックやフォークに関わる新たな提案などのフィードバックを数多く得ることができた。今年度は、そのフィードバックをサービスに反映させながら、講義運営に耐えうるサービスとして開発を強化すること、さらにはこのサービスを他の講義やワークショップでも利用可能なパッケージとしてまとめることを目的とする。


Fabbleを用いた外国語電子教材

教材の概要::

 本講義の中で、学生のものづくりの記録およびまとめのためにFabbleを用いた。また、その使用感を見ながらFabbleの実装もアップデートする作業を行った。教材としては、以下にも示す通り、まずFabbleの概要および使い方を英語でまとめた。





その内容として、日本語では以下の通り。


概要

FAB + DOC + FORK

Fabbleは「文脈やストーリーと深く紐づいたモノづくり(FAB)」のためのドキュメント(DOC)共有サービスです。モノづくりの過程で生まれる知識、アイディア、ノウハウ、ストーリーなどを緩やかに構造化しながら蓄積し、次なる再利用(FORK)を促すことでさまざまな情報の共有と新結合をはかります。

機能

Fabbleでは大きく2つの形式で記述できます。まず、「Memo(メモ)」は自由記述方式であり、あらゆる情報を書き込めます。 一方「Recipe(レシピ)」は、「有向グラフ(矢印)」を用いてモノづくりのプロセスを時系列に整理していくものです。この2つは、ノートの「右ページ(白紙)」と「左ページ(罫線つき)」のようなものととらえることができ、両方の形式を組み合わせて、情報の整理方法を工夫していくことができるようになっています。

また、Fabbleでは、「スライドショー」機能を設けています。 「スライドショー」中は、「Recipe(レシピ)」に投稿された写真や映像が、有向グラフ(矢印)で結ばれた順番にスクリーンに拡大表示されます。このため、別途プレゼンテーション資料をつくらなくても、Fabble上で、いつでもどこでも、プレゼンテーションを行うことができます。

特徴
Fabbleが、他の同種のサービスと最も異なる点は、モノづくり(FAB)プロジェクトの「はじまり(初期段階)」から「おわり(最終段階)」まで、あらゆる段階を支援し、日常的に使うことができることです。 モノづくり(FAB)プロジェクトの「はじまり(初期段階)」では、主に Memo を使用し、制作者本人が自分自身のために、関連リンク、制作ノート、制作メモ、実験データや試行錯誤の過程を整理しながらつけていくことができます。

モノづくり(FAB)プロジェクトの「おわり(最終段階)」では、主に Recipe を使用し、他の人も同じつくりかたを再現できるように、必要最小限の情報だけに 要約し、良くまとまった「手順」を保管することができます。 また、ある制作者にとってプロジェクトが「おわり(最終段階)」であっても、それを見た別の 制作者が、そのプロジェクトを引用することで、また別のプロジェクトを「はじめる(初期段階)」ことができます。

GitHubと同様、Fabbleでは、こうした連鎖=「FORK(分岐)」を重要視しています。

このようなさまざまな機能を有し、さらに「グループ機能」を持っているため、個人のみならずグループ単位のプロジェクト管理にも有効です。メイン開発者、サブ開発者、プロジェクトパートナー、感想コメント、アドバイス、試用感など、さまざまな参加の方式、コミットメントの度合いを許容することも大きな特徴です。

講義およびワークショップでの実践::
 
 2014年度のオープンデザイン実践では、上記のFabbleを用いて、「身近な人の生活を少し豊かにするWeb of Things」というテーマで制作・実践を行った。

 Open Web BoardやArduinoを用いてセンサやアクチュエータを制御し、それをモノと組み合わせることでパーソナルな生活のニーズや特徴に寄り添ったデバイスがさまざまに開発された。本教材では、それらの主な成果をまとめたFabbleのページへのリンクも載せてある。ただし、本講義は日本語で開講されたため、Fabble上の学生のページの内容は日本語が現状中心に構成されている。今後、外国語への対応を奨励しながら国際的に情報をシェアする場として発展させていきたい。

  • Dreamdate

  • SHIO
  • 完全二人用!スタバのお兄さんシステム


  • 成果物をまとめる場として、そしてそこに至るプロセスを醸成させる場としてFabbleの有用性は本講義を通して確認できた。今後は、講義内での学生からの使用感等のフィードバックを元にサービスの開発を継続し、教材としてもブラッシュアップしていきたい。