はじめに


現在、朝鮮半島における激しい情勢変化や政治的不安から生じている緊張が高まり、世界の各国からさまざまな形での注目が韓国と北朝鮮の統一問題に注がれている。

特に両国は、同じ民族といった同一民族意識が非常に高い世界でも珍しいといってもいいほどの対立環境に置かれている。こういった背景から韓国・北朝鮮の統一後に生じると予測できるさまざまな問題から私は、実生活にもっとも影響されると思う言語問題を考えてみた。

実際、両国の国民が用いている言語のいくつかの部分がすでに変化しており、特に事物を指定、名づける固有名詞などの単語はもちろん、アクセント、イントネーションなどの韓国語固有の特徴までも異なってきている。

こういった状況から、現在両国で用いられている言語を比較し、どのような相違点があるかを確認することにした。このような作業は最近、韓国国内の言語学者や北朝鮮の言語学者達による論文や研究が発表されているが、その内容が抽象的・偏見的であることが非常に多い。

北朝鮮の文法書には音声学を独立した学問分野として認めていない。語音論の一部として取り扱っている。語音論で扱っている内容が韓国の音韻論とかなり近いが、語音論では個別音の研究はもちろん、いわゆる音節、単語、文章に対する発音研究も含める大きな概念として使われている。しかし、語音論の領域では個別音に関する生理学的な特性はもちろんのこと、実験を通じた科学的で具体的な理論を立てていることを考えてみると、音声学の重要性を考慮していないと思う。

 

今回の研究で、北朝鮮に近い言葉を用いている中国・吉林省延辺市を中心とした地域を対象に2回にわたって現地調査を行った。この作業は、韓国語と異なる文法事項を発見し、それらを紹介することである。

 

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TAE-MIN UM <mailto:tum17@mag.keio.ac.jp >