Napsterの社会的影響は、そのユーザ数の急激な増加を見ると良く分かる。図 2.2はMedia Matrix社の調査による、利用に基いた米国家庭内ユーザ数の推移 である。コンピュータの全ユーザ数がほぼ横ばいなのに対して、Napsterのユー ザ数は2000年2月から8月までの間に、およそ6倍に増加している。Napster社に よると、ユーザアカウントの登録に基いたユーザ数は1999年10月の時点で40万 人に満たなかったが、2000年12月には4,800万人を越えたという。
Figure: 米国家庭内におけるコンピュータおよびNapsterユーザ数の推移(2000年)
技術的にNapsterのような通信形態が可能であることは、これまでも知られて
おり、ICQに代表されるインスタントメッセー
ジングソフトウェアはハイブリッドP2Pの先駆的な例である。Napsterの貢献は
技術的先進性というよりも、むしろ従来型のC/Sシステムに対する自律分散型
システムの優位性の一例を示したことと、音楽ファイルの共有という具体的な
分野において、大規模でかつ流通コストの低いコンテンツ配信モデルを提示し
たことにあると言って良い。