大腸菌におけるχ配列の過剰頻度と
4コドン頻度の関連に関する解析


大腸菌において、χ配列(5'-GCTGGTGG-3')はRecBCDにより認識され相同組換 えを促進するホットスポットである。我々は以前 χ配列の方向が複製側に偏る傾向は、リーディング鎖のG塩基偏りによって 生じており、その役割のために生じたのではないという結果を報告した。 そこでχ配列が現在のような配列になったのは進化の過程において、組換え酵 素が都合の良い(=数の多い)配列を選択したためであると考え、現在のよう なGCTGGTGGという配列が大腸菌ゲノムにおいてχ配列として選択され たのは多用されるコドンを使用したという仮説を立てた。

 今回、我々は大腸菌ではロイシン・バリンというア ミノ酸が多用されていることと、χ配列の約70%がctg-gtgのロイシン・バリ ンの読み枠で読まれるという二つの解析結果から、ゲノム上に高頻度で存在す るロイシン[ctg]+バリン[gtg]という6塩基配列の両側にgを配するようなコ ドンの並びが高頻度で現れて偶然大腸菌χ配列を形成していると推測し、4コ ドン頻度のマルコフ解析を行った。その結果、χ配列自体は配列を増加させる ような選択圧を受けてはおらず、コドン(アミノ酸)の影響によるものである という結果が得られた。これにより、大腸菌のχ配列頻度が高次のコドン頻度 で説明できることがわかった。

用語解説

研究内容

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