大都市郊外に残存する自然環境は、「身近な緑」として都市構成上重要な役割を果たすものである。大都市郊外 は同時に都市地域の健全な発展と秩序ある整備を目的として市街化調整区域(以下、調整区域)が定められている個所
でもあり、自然共生都市実現に向けての取り組みが行政・ 市民・企業を取り込んでおこなわれようとしている現在の
流れの中で、調整区域を自然環境の保全に果たす役割から 見直す必要がある。
本研究は、大都市郊外部の調整区域を自然共生都市の実 現に寄与する緑地環境の潜在力を持つ地区として捕らえ、この地区での緑地からの環境形成を検討するための基礎的
資料を目的として行ったものである。
既往研究との関係
調整区域全体では農村地域を中心としたもの、規模の多 いきい自然環境の保全やレクリエーション施設としての運営法など比較的まとまりとして捕らえやすい環境を扱うも
のが多く、保全制度の評価は一つの制度について扱ったものがほとんどである。本研究の独自性は、大都市郊外の調整区域全体緑地環境
の整備の潜在性を持つ地区と位置付けて、その環境形成の手法についてGIS利点を生かした、多角的な分析を行った点にある。 研究の手法
@行政資料からの調査とArcViewから、調整区域におけ る自治体の緑地保全施策の体系を把握し、保全体系に対す
る緑地環境を分析した。これに基いて、A市域、流域のス ケールにおいて土地利用現況の調査分析を行い緑地分布の
傾向を分析した。さらに、この緑地環境への効果的な保全 手法の導入を検討するため、町丁目のスケールの対象地を
選定し、B緑地分布状況の詳細な把握と現状の保全制度と の関係の分析C過去に遡った地域構造の把握とC開発許可
台帳を用いた開発動向の調査から、現状の保全制度体系で の対応が困難な緑地環境への保全活用の適用策を示した(図
1)。
対象地の概要
本研究では、横浜市をの市街化調整区域を対象とした調 査分析う。横浜市では、市街化区域が32866ha、市街化調整区域は10511haで市域の1/4が市街化調整区域に指定されている。横浜市は緑の基本計画のに基いて、緑の軸と拠点の整備、都市農業の振興、緑化推進などの多様な緑地保全の施策が行われているが、この中でも調整区域は特に、緑の7大拠点や農業振興地域における横浜市独自の制度、農業専用地域、ふるさと村や恵みの里の農業施策などの施策の核をなすものである。(図2)
使用データとアプリケーション
本研究では、GISを用いた空間解析によって調整区域の環境を分析した。基本となるデータは、神奈川県から提供された「平成7年度版 都市計画基礎調査」と横浜市緑政局から提供された「緑のオープンスペース事業把握システム」を用い、デジタルデータの無いものについては、地図データをプロットし独自のデータを作成した。GISのアプリケーションとしては、ESRI社のArcView3.2、と拡張機能を用いた。
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