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: 参考文献 : DiCoMo2001 : 名前付けアプリケーション

まとめ

本論文では,ユーザ状況を認識し,それに応じて動作を変更する状況適応型ア プリケーションの有用性を示した.しかし,従来の状況適応型アプリケーショ ンは特定のセンサに依存して開発されているという問題点を指摘した.このた め,センサが使用できない環境では,状況適応型アプリケーション全体が使用 不可能になり,利便性が低かった.

この問題に対し,本研究ではセンサデバイス非依存性を提供し,より容易に状 況適応型アプリケーションを開発することを可能にする基盤ソフトウェアを提 案,設計し,実装および評価を行った.R2システムを使用することにより,状 況適応型アプリケーションをセンサデバイスを意識することなく容易に開発で きる.

R2システムは,センサデバイス非依存性を名前という抽象化されたメタデータ を使用して実現する.ユーザ状況はカテゴリと名前の対の集合として定義され る.状況適応型アプリケーションは,センサ情報そのものではなく,名前のみ を扱う.

また,状況適応型アプリケーションがR2システムを利用する際には関心のある ユーザ状況を登録する.R2システムは監視するセンサ情報がユーザ状況の変化 によって変化すると,登録済みの状況適応型アプリケーションに対してイベン トを送信する.このイベントを受信することにより,状況適応型アプリケーショ ンはユーザの状況を認識できる.これらの機能により,R2システムは,状況適 応型アプリケーションに対し,センサデバイス非依存性を提供する.

本論文ではR2システムを使用するためのライブラリを定義し,実装したことを 示した.同時に,このライブラリを実際に使用し,R2システムを利用するセン サデバイス非依存な状況適応型アプリケーションを作成し,その有用性を示し た.

R2システムは状況適応型アプリケーションに対する基礎的な技術として使用可 能である.R2システムを利用することにより,状況適応型アプリケーション制 作者はより容易に状況適応型アプリケーション開発が可能である.本研究によ り状況適応型アプリケーションの開発および普及が促進されるであろう.



Fumio Wakayama 平成14年2月26日