2003年度 森泰吉郎記念研究振興基金 国際共同研究・フィールドワーク研究採択 研究成果報告書

実空間インターネットにおける協調モデルの形成と実証

1. はじめに

1.1 概要

現在、RFID (Radio Frequency Identification; 電波による自動認識) 技術に普及の兆しが見え、通信や計算のための資源を持たない人、物、 環境の持つ情報をネットワークで利用可能にする、 いわゆる実空間インターネットの実現が現実味を帯びてきた。 実空間インターネットでは、 現在のインターネットで盛んに行われているようなファイル等の情報資源の共有や、 プロセッサやストレージといった計算資源の共用に対応する、 物理資源の共有や適切な(再)分配による有効な活用が可能になることが期待される。 このことを実現するためには、peer-to-peer 技術に代表される、 インターネット上での自律・分散・協調のための新たなテクノロジーを、 同様に実空間インターネットにも適用していくことが望まれる。

本研究では、peer-to-peer 技術により培われた知見を活かし、 実空間インターネットにおいて人間が公平性を保ちつつ協調するためのメカニズム群を 仮説として提示する。 そして当該メカニズム群を実動させる実験を行い、 その中での人間の振る舞いを実地に調査することにより各メカニズムの検証を行う。

1.2 目的

本研究は、 実空間インターネットにおける人間の協調のためのメカニズム群を実動させ、 比較し、その有効性を検証することを目的とする。 これにより、 実空間インターネットを応用したビジネスモデルや地域の循環型経済システムの デザインに役立てることを目指す。

また、RFID を用いるシステムを社会に問いかけることにより、 RFID 技術の啓蒙を行ない、 実空間インターネットとその課題を一般の人々にとって身近なものにすると同時に、 この技術を社会に受容されるものにしていく上でのフィードバックを得ることを狙う。

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