2003年度 森泰吉郎記念研究振興基金 国際共同研究・フィールドワーク研究採択 研究成果報告書

実空間インターネットにおける協調モデルの形成と実証

2. 背景

2.1 実空間インターネット

RFID は、電磁波を用いてICチップに格納されたIDを読みとり、 物体を(例えば特定の商品と)認識する技術である。 RFID は現在広く自動認識のために用いられているバーコードを代替するものとして 期待されており、バーコードと比較して次の特長を持つ:

  1. リーダが非接触(規格に依るが数cmから数mの距離)でIDを読みとることができる。
  2. IDに個体を識別するためのシリアル番号を付加できる。

RFIDは物流を効率化することは勿論、 RFIDタグの付けられた個々の物体をネットワークから識別し、 情報として扱うことができるということを意味しており、 実空間をインターネットの延長として扱うことを可能にする。

2.2 実空間インターネットと協調のモデル

実空間インターネットは、情報の蓄積、共有や検索をはじめとして、 我々が普段、インターネットで便利に行っている操作を 実際の物に対して行えるようになることを意味している。 情報であれば起源が分散しているものを集中的に管理することも可能だが、 物理的な実体は局所性が高いため、 これらの操作は本質的には自律分散的に行われる必要があり、 peer-to-peer に代表される、多中心的、非集中型の技術の適用が望まれる。

その際に注意すべき点は、 分散システムを協調に向かわせるのは結局は人であり、 その成否はそれぞれのサブシステムの所有者、管理者、利用者等、 人間がいかに効果的に協調できるかにかかっているという点である。 従って協調に向かうインセンティブの存在や、 協調において公平さが感じられることが重要であり、 例えばポイントや通貨を用いた協調のためのメカニズムを構築し、 検証することが今後のために必要である。

そこで、この研究では、RFIDを用いた特定の条件の下で、 競争・競合の要因や協調に向かう仕掛け等が異なる複数の協調メカニズムを用意し、 実際に動かすことにより検証を行う。

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