2003年度 森泰吉郎記念研究振興基金 国際共同研究・フィールドワーク研究採択 研究成果報告書

実空間インターネットにおける協調モデルの形成と実証

4. 実験計画

4.1 第5層における検証の計画

  1. 概要

    小学生向けに販売される書籍 6,000部に RFID タグを付け、 書籍を所持する参加者同士が協調しない限り達成できないゴールを設定し、 当該企画の参加者の挙動を観察する。

  2. 対象となる書籍

    村井純著「インターネットの不思議、探検隊!」(太郎次郎社エディタス) を対象とする (写真 4-1)。 内容は、小学校高学年以上を主な読者として想定し、 インターネットの仕組みを分かりやすく物語仕立てで解説するものである。 実空間インターネットを用いる未来社会の姿も描いている。 初版は約 6,000部であり、そのすべてに RFID タグを付加した (写真 4-2)。

    書籍 写真 4-1. 書籍

    書籍に付加されたタグ 写真 4-2. 書籍に付加されたタグ

  3. RFID リーダの設置とインセンティブ

    複数の拠点でイベントを行ない、イベント期間に限り RFID リーダを設置する。 イベント会場としては、 できるだけ、こどもたちがインターネットについて学べる場所を選ぶ。

    これらの場所を、対象書籍を持った参加者が訪れ、 RFID リーダに認識されると、システムからポイントが贈られる。 ポイントは Web 上のコミュニティ内で他のメンバと交換でき、 自己の信用値を向上させることができる。 信用値が所定の値を超えると、 「インターネットの不思議、探検隊!」の物語の中に登場する 「不思議の国」の国民として認定され、 「不思議の国」が発行するパスポートが授与される。

  4. 協調の必然性とバリエーション

    RFID リーダが設置される拠点の多くは東京近郊にあり、 地理的に離れた場所に在住する参加者にとっては不利となる。 しかし、システムからポイントを取得した参加者も、 そのポイントを消費しなければ信用値は向上しないため、 実際に拠点を訪れない場合でもポイントを贈与されることは可能である。

    この実現のためのメカニズムを複数用意し、 6,000部の書籍に割り振られるIDを対応するグループに分割し、比較実験を行う。 各メカニズムは、各拠点における動員数、ランデブー(出会い)の回数、 「不思議の国の国民」の輩出数 (東京近郊/その他の地方) 等で評価する (参加者が少ないため、現状、このことは行なえていない)。

  5. 予備実験

    WIDE プロジェクト内で利用できる LETS システム "WIDE Hour" を開発し、 WIDE 合宿 (泊りがけミーティング) にて WIDE メンバの挙動を観察する。 これにより、実際に信用値をインセンティブとするメカニズムが、 人間の行動に影響を与えるかを検証する。

4.2 その他の層における検証の計画

  1. 第1層の検証実験計画

    上記のイベント開催時、および返本時を利用してタグの破損率の計測を行なう。

  2. 第2層の検証実験計画

    返本時の倉庫における記録を用いて個体を追跡し、 各個体について返本サイクルを明らかにする。

4.3 ソフトウェア

実験を実施するため、次のソフトウェア群を開発した。

  1. OMELETS (Open, Modular and Extensible LETS)

    LETS システムを実現するための Java パッケージである。

  2. WIDE Hour

    WIDE メンバが利用可能な、OMELETS を用いた Web アプリケーションである。

  3. ACCIANCO.JP

    「インターネットの不思議、探検隊!」の読者が利用可能な、 OMELETS を用いた Web アプリケーションである。

  4. EPC Terminal

    EPC の検出や情報の登録を行なえる Java アプリケーションである (写真 4-3)。 イベント/デモンストレーションおよび倉庫における計測に用いられる。

    EPC Terminal 写真 4-3. EPC Terminal

次へ››››