2003年度 森泰吉郎記念研究振興基金
研究成果報告書

政策・メディア研究科
修士課程2年 片桐崇宏
学籍番号:80231536
chau@sfc.keio.ac.jp

 1. 研究課題

「手の利きや加齢効果に関わらず利用可能な作業環境の構築」

人間にとって必然的な左右の手の「利き」と身体機能の低下を考慮した、 ユーザインタフェース等の作業空間の必要性は認識されつつあるが、 それは定性的なものか、定量的であっても、単純化したガイドラインが多い。 例えば、「床上〜cmから〜cmまでの範囲に○○を設置する」というような感じである。

この研究ではその現状を鑑み、 右利きの若者だけでなく左利きの人や高齢者といったマイノリティの人達も対象にして、 さらに彼らの「主観」を実験・測定を行ない、新しい指針作りを行なう。 具体的には、ある角度における手の出しやすさ(SD法を用いて主観評価を行なう)と、 その位置ではどれくらい作業を続けられるか(伸張状態に置いた腕の耐久時間を測定) ということを主眼に置いた実験を行なう。 この結果を踏まえ、実際の種々の環境設計に活用できるような定量的ガイドラインを作成する。

 2. 活動概要

本年度における活動概要は、以下の通りである。

 3. 研究活動の成果

 3.1. メーカーへのヒアリング

現在の機器や設備類のインタフェースは、使用者から見て右側に設置されているのではないかと考えた。 それを確かめるべく、不特定多数の人が用いるものの代表として、 自動販売機、公衆電話、エレベーター、自動改札機を取り上げ、 そのインタフェースの配置についてメーカーの開発担当者に取材を試み、考察した。

 3.1.1. 自動販売機

自動販売機の日本国内における設置台数は、2002年12月時点で5,524,700台である。 図1より、その中で最も普及している飲料自動販売機の中でも、 最も割合の大きい清涼飲料水の自動販売機を調査の対象とした。

Fig.1
図1 日本国内における自動販売機設置状況(2002年12月末時点)

図2に様々なメーカーの清涼飲料水用自動販売機を掲げた。 この通り、商品サンプルの配置や広告の有無などには趣向が凝らされているが、 商品を選ぶボタンと商品取り出し口、それに硬貨や紙幣の投入口とお釣りの受け口 (黄色く囲まれた部分)といった自動販売機の基礎的要素の配置はどの機種もほぼ統一されている。 そしてどの機種もほぼ例外なく、硬貨や紙幣の投入口やお釣りの受け口は、機械前面の右側に配置されている。 その理由について自動販売機メーカー大手であるサンデン株式会社の担当者に聞いた。 その結果、日本自動販売機工業会が策定したユニバーサルデザインガイドラインにより、 2002年11月よりこの指針の下で商品化を行なっているとのことだった。 その指針とは、以下の三点である。

  1. 硬貨投入口:高さ寸法=90cm〜125cm
  2. 紙幣投入口:高さ寸法=90cm〜120cm
  3. 1. と 2. の配置は極力近づける

この高さは子供から高齢者まで使いやすい位置を想定したものである。 一方横方向の基準については、業界としてのガイドライン等のものはなく、 人間の利き手は右の人が多いという理由から、 操作性を考慮して向かって右側にレイアウトされているものがほとんどだということであった (商品取り出し口が上部中央にある機種などでは、硬貨装置が右、紙幣装置が左と分かれている場合もある)。

これは、硬貨や紙幣といった細かくまた薄いものを扱う作業は、 ボタンを押したり缶を取り出したりといった作業よりも高い巧緻性が要求されるため、 人口の過半数を占める右利き(前原, 1989)の人が扱いやすいように配慮したためではないかと思われる。

Fig.2
図2 清涼飲料水用自動販売機

 3.1.2. 公衆電話

携帯電話の普及により、公衆電話の設置台数は近年徐々に減ってきているが、 なお2002年度末の時点で日本全国に584,162台設置されている。 現在の公衆電話機の種類としては、図3のような磁気カード型のアナログ電話とデジタル電話、 そしてICカード電話の3種類がある。 この図3の通り、どの電話機のいずれも、受話器は機械の左側面に掛けられるか、 前面の左側に保持されるデザインとなっている。 一方ダイヤルやカード挿入口・排出口、硬貨投入口や釣銭の出るところは受話器よりも右側にくるように設計されている。 そしてどのタイプの電話機を使うにせよ、電話をかける時は、 まず受話器を持ち上げないとその他の操作ができない設計になっているため、 利用者はおのずと受話器を左手に持ち、その他の操作を右手で行なうように仕向けられる。

これらの電話機を製造しているメーカーに関してNTTグループ(NTT東日本NTT西日本)に問い合わせたが、メーカー名や連絡先についての情報は得られなかった。 ただ公衆電話のインタフェース配置については、ガイドライン等の指針はないが、 ユーザーから提供された意見などを基に第三者(モニター等)の利便性評価を行ない、 利便性や必要性を勘案し検討しているとのことだった。

このやりとりから察するに、公衆電話のインタフェース配置についてユーザー評価を行なっているのであるから、 利き手についても何らかの考慮がされている可能性がある。 そして受話器を落とさずに上げ下ろす動作よりも、薄い硬貨やカードを所定の場所に、 仕損じることなく入れる動作や、相手の電話番号を間違えずにダイヤルする動作の方が高い巧緻性が要求されることは明らかである。

Fig.3
図3 公衆電話の種類(左からアナログ電話、デジタル電話、ICカード電話)

 3.1.3. エレベーター

日本エレベータ協会によれば、2002年度の時点で全国に設置されているエレベーターは544,810台で、 そのうち人の運搬に特化したエレベーターは470,923台と、全体のおよそ86%を占める。 乗用エレベーターのかご内部の基本的構造は、 エレベーター内部から見て出入り口扉に向かって右側の袖壁(扉と同じ面の壁)に、停まる階を指定する操作盤が設置されている。 なぜこのような配置になっているのか、大手エレベーターメーカーである三菱電機株式会社のビル計画部に問い合わせた。 その結果、特に設計ガイドラインは設けていないが、使いやすさを考慮して次の2点の基本的考え方を採用している。

(1) 戸が片側に開くタイプの場合:
かご内で出入口に向かって戸が納まる側(戸袋側)の設置を一般的な基準としている。 これは戸袋側の方に設置スペースがあることと、操作盤の前に人がいても人の出入りの妨げになりにくいためである。
(2) 戸が中央から分かれて両側に開くタイプの場合:
内部から出入口に向かって右側設置を一般的な基準としている。 設置はどちらでも可能だが、右側の方が多くの人に自然に認知されやすく、 右手で操作しやすいとされており、右側設置を標準として採用している。
かご室が大きい場合は、多くの人が乗車し右側の一面だけでは操作しにくいため、 ユーザーからの要望で左側に、副操作盤をさらに設置する場合がある。

以上が基本的な考えだが、バリアフリーの観点から、標準形の住宅用や病院向けの寝台用エレベーターには、 従来の袖壁設置のかご操作盤から変わって、側面壁に設置したかご操作盤が開発されている(宮脇・城戸・松田, 2001)。 これは従来の袖壁取り付け操作盤に比べ、かご内で振り返る必要がなく、特に車いす利用者に対する操作性向上に効果がある。 これにより次の利点がある。

この通り利き手の問題に関しては、「右手で操作しやすい」ことを理由に操作盤を右側の袖壁に設置しているようである。 右手で操作することが容易なのはとりもなおさず右利きの人である。 だがこの企業では従来の設計方針に甘んじることなく、時代の要請に応えてより操作性、 認知性に優れた操作盤を開発していることが伺える。

 3.1.4. 自動改札機

どのメーカーの製品であれ、利用者は自分の身体の右側に設置された投入口(または読み取り部)を使用することになる。 つまり左手よりも右手で乗車券を投入(または接触)する方が利用しやすい作りになっている。 この件に関して、自動改札機メーカーの一つである日本信号株式会社に取材した所、次のような回答を得た。

現在の改札機は、通路の幅が約0.55m、通路の長さが約1.6m、乗車券の投入口から取り出し口までが約1.1mであり、 これらの数値は乗客の改札機内の通過速度、 乗車券の搬送速度と乗車券情報の処理時間との関係などをもとにさまざまな実験の結果得られた最適と考えられる数値である。 多くの改札機は「入場出場兼用機」といい、入場処理と出場処理を、通路を挟む形で設置された左右一対の改札機で可能としている (どちらか先に乗車券を入れた方を優先する)。 つまり、1通路あたり2つの乗車券の処理機構を持っており、これを左側にも乗車券の処理機能を持たせるとなると合計4つの乗車券処理機構を持つことになる。 これは技術的には可能だが、単純に考えても通路の長さが約3mとなり、通路での利用客のスムースな通過が確保しにくくなる。 またそれに伴う装置の価格が非常に大きなものとなってしまう。

それで同社で初めて自動改札機を開発する際、処理機構を乗客の右側と左側のどちらに設置するかが問題になったが、 当時既にあった自動券売機や自動販売機の硬貨投入口が機械の右側に設置されていた(右利きを前提にしていた) こともあり、右側に設置されることになったのだという。 その際左利きの人への対応をどうするかという議論もあったようだが、慣れてもらえるだろうという結論で落ち着いたということだった。

人がたくさん集まる場所で不特定多数の人が用いるものの代表として、 自動販売機、公衆電話、エレベーター、自動改札機を取り上げ、そのインタフェースの配置について考察した。 その結果、巧緻性や操作性、或いは慣れの点から、右利きの人に有利になるようにインタフェースを右側に配置した設計がなされていた。 だがこのように片側に偏らせた配置により、左利きの人にとっては逆に使いにくくなっている。 また右利きの人にとっても、右腕を負傷している時とか、右肩にショルダーバッグを提げている時とか、 自由に右手が使えない状況下にあっては左利きの人と同じような不自由を招くものとなっている。

これをまとめると、人がたくさん集まる場所で不特定多数の人が用いるモノについて、 巧緻性を要するインタフェースはほぼ例外なく右側に取り付けられている。 これは、右利きの人が使いやすく使えることを自然と想定しているためである。 そして利き手に起因して不具合が生じるのは、人体の多様性(この場合は利き手) にモノやインタフェースの設計が追いついていないためである。 また従来の設計方式は、人体寸法で表される身体的構造を中心にした設計方式である (例えばNeufert, 1982; 日本建築学会, 1994, 1999, 2003; 小原, 1988) ために利き手の問題に対処できておらず、これが左利きの人が不自由を蒙ってきた原因の一つである。 一方利き手、つまり左右上肢の心理的偏側性は、大脳の働きと密接に結びついており (例えばLudwig, 1932; Gur et al., 1982; Dassonville et al., 1997; Geschwind et al., 2002; 苧阪, 2002)、 利き側の上肢の解剖学的・運動学的機能は、右利きと左利きの人では互いに鏡像関係になるが、その点を考慮すればほとんど同等である (例えば柏口ほか, 1994; 辻・大久保・小池, 2003)。 この議論を踏まえ、身体的構造ではなく人間の動作に基づいた設計方式を構築することにより、利き手の問題を解消できると考える。

よって以降では、この仮定に基づき、インタフェース操作における最適位置の数値的裏付けを取ることを目的とした実験的検証を行なった。 先年度は立位姿勢における右利き・左利き双方の利き手の使用領域を割り出す実験を行った。 今年度はその結果を踏まえ、インタフェースを使用する際には上肢を上下左右色々な方向に曲げることを考慮し、 その時の使用者の主観、並びにどれ位上肢を持ちこたえることができるか、それを検証した。

 3.2. 上肢を屈曲させた時の主観、及び静的持続時間測定実験

 3.2.1. 主観評価測定実験

利き腕を上下左右に屈曲させた時の主観を因子分析で測定し、どの屈曲角度が最適に感じるのかを、右利き・左利きの被験者毎に検証した。 ここでは先年度の研究と整合性を持たせるため、立位姿勢で、前方に設置された刺激をとっさに片手で触れさせる実験を実施した。 だが今回の実験では利き腕のみを測定の対象とした。 ある刺激に触れた時の印象を7段階尺度の質問紙に回答させ、その結果得られたデータを因子分析した。 そして得られた因子得点を右利き・左利きの被験者に分けて評価し、それぞれが感じる最適な位置について検証した。

実験の結果は以下の図4の通りになった。 これをまとめると、右利きの人にとっては上肢を60%伸ばした時に下方20°の位置が最も自由、かつ明確に操作しやすく、 一方左利きの人にとっては、同様の状態で0°から下方40°、及び外側20°にかけての位置が最も操作しやすいことになる。

※この実験の詳しい経緯は別掲の修士論文(第4章)を参考されたい。

  左利きの人 右利きの人





Fig4_Left_Factor1 Fig4_Right_Factor1


Fig4_Left_Factor2 Fig4_Right_Factor2

図4 各位置における主観

 3.2.2. 静的持続時間測定実験

先年度の実験では人間の利き手の三次元的作業域を計測した。 それに対し上記の主観評価実験では、人間の中で生起する感情の面からこれを捉えた。 一方本実験では、上肢がその作業域内ではどの位の時間静的状態を持続できるか、 上肢の屈曲角度の違いにおける持続時間の異なり具合を実験的に検証する。

実験の結果は以下の図5の通りになった。 要約すると、右利きの被験者については、0°から下方40°にかけての範囲と、 0°から外側20°にかけての範囲が平均持続時間は長く、 また逆に外側40°、及び内側の領域は、平均持続時間は短いという結果になった。 一方左利きの被験者では、上方20°から下方40°にかけての範囲と、さらに外側20°にかけての範囲で平均的な持久時間は長く、 また40°より内側の範囲は逆に持久時間が短くなる傾向が見られる。

※この実験の詳しい経緯は別掲の修士論文(第5章)を参考されたい。

Fig5_Left Fig5_Right

図5 左利き被験者(左図)・右利き被験者(右図)・における、各位置における平均持続時間とその有意差

 3.3. 学会発表

2003年8月24日から29日にかけて、韓国・ソウルにて開催された人間工学の国際大会 「XVth Triennial Congress of International Ergonomics Association」にて研究の成果を発表した(図6参照)。 この大会は "Ergonomics in the Digital Age" と題して、IT化が急速に進む現代社会において、 人間と環境はどのように歩み寄っていくべきかを議論した大会であり、モノやインタフェース、システムの使いやすさに関して、 工学・情報科学・心理学・医学等のあらゆる観点から研究者が集い、研究発表を通じて情報交換が活発に行なわれた。 また企業の人間工学的取り組みを視察するツアーも行なわれた。

この大会において、"Workers' Feelings about Work Spaces: Evaluative Methods and Design Principles" と題して発表を行った。 「ユビキタス」という言葉に代表されるような高度情報社会のさらなる進展により、今後老若男女を問わず、自動販売機や銀行のATM、 コピー機やインターネット検索の操作パネルなどのタッチパネル型インタフェースを立ったまま操作する場面の増加が見込まれる(矢野, 2003)。 本発表は現在のこのような状況を踏まえ、現在こういったインタフェースを設計する際は使用者の側の主観が見過ごされており、 なおかつ人口の大多数を占める右利きの人の都合が優先され、その結果マイノリティである左利きの人にとって使いにくいものになってしまっていることを指摘した。 そしてこれからのインタフェース設計にあたっては使用者の主観、及び利き手も汲み取るべきだと、実験的検証を通して主張したものである。

大会期間中の発表持ち時間は1時間と短いものであったが、その間、合計15名位の様々な国籍 (分野は主にユーザインタフェースや人間の動作・行動特性など)の研究者と非常に有意義な議論をさせて頂いた。 持ち時間を30分オーバーしてしまうほど、白熱した議論であった。 特に実験方式が興味を引いたのか、それに関する質問が多かった。

また、この大会参加に関して、森泰吉郎記念研究振興基金より発表にかかる諸経費を助成して頂いた。 この場を借りて改めて御礼申し上げる。

XVth Triennial Congress of International Ergonomics Association のサイト (www.iea2003.org)
発表用ポスター (PDF形式)
発表時に配布した付属資料(利き手テスト) (PDF形式)

Fig.6
図6 発表風景(2003年8月24日)

 3.4. 新しいガイドラインの提案

これまで得られた定量的・定性的データから、新たな設計方式についての具体的な提案を示す。 その設計方式は、3.1. でも述べたように人間の動作に基づくものである。 上肢の動作を考える時、支点となる肩峰点と、作用点である手先の位置関係を見ればよい。 これはすなわち、上肢の屈曲角度と、上肢長に対する実際の伸展距離の割合で表される。 その一例を図7に掲げる。これは上部と前面にインタフェースを持つ作業スペースのごく簡単な設計図である。 この図の赤い点は肩峰点、黒い点は作用点を、赤い線は体幹、黒い実線は上肢を表す。 図7の見方は、上肢を100%伸ばした姿勢で基本肢位から13°挙上すると前面のインタフェースに到達し、 また60%伸ばして60°挙上すると上部のインタフェースに接する、というものである。

Fig.7
図7 新しい設計方式の書式例

この設計方式に3.2.の実験的検証で示した実測データを適用する。 それは以下の表1・表2のようなガイドラインとなる。

この表の実測値に基づくガイドラインを図7のような設計方式に当てはめると、図8のようなものが描けるだろう。 例えばこの図は、右手の使用を上方から俯瞰したものである。 表1に掲げたような右利きの人の水平面における利き手使用範囲と特定の角度における主観が、この図で使われている。 この図において、右腕を60%伸ばした姿勢をとって水平面上で色々な角度に屈曲した時、緑色の丸は使用感について好印象を与えていることを表す。 そしてオレンジ色はその印象が薄れ、赤い丸は逆に悪印象をもたらしていることを示す。

表1 水平面方向についての、主観と静的持続時間の関係
(上段:主観の総合評価、下段:0°に対する持続時間の比) Tab.1

表2 矢状面方向についての、主観と静的持続時間の関係
(上段の矢印:作業域の範囲、中段:主観の総合評価、下段:0°に対する時間比) Tab.2

Fig.8
図8 定性的・定量的な客観的記述を盛り込んだ設計方式(右手の場合)

 4. 今後の課題

本年度の研究活動では、主に20歳台の若年者を対象に、立位姿勢での利き側の作業域と主観、及び静的持続時間を扱った。 そして個人的に形態を改変することが困難なモノやインタフェースを対象にした。

だがここで示した情報だけでは不完全な面もある。 実験的検証は主に若年者を対象にしたが、子供や高齢者ではこれと異なる結論が得られることが考えられる。 また立ってインタフェース操作を行なうことを前提にしているが、椅座位姿勢や車椅子使用者の場合も同様に検討しなければならない。

計測対象に関しても、非利き側における作業域や主観、そして持続時間を検証することが重要な場合も考えられる。 また計測の際、被験者には直立姿勢で実験室実験を課したが、人が行き交う喧噪の中を目標(例えば自動改札機) に向かって歩きつつインタフェース操作を行なわせるような課題を課したら、これとは異なる結果が得られたかもしれない。 他にも、今回の研究では刺激に手を触れる課題を課したが、これとは別に硬貨を投入するような動作などでも結果は変わる可能性がある。 これらは今後の課題である。

だが上記 3.2. で示したのと同様の実験的方法を用いれば、これらの場合のデータが即座に得られ、上記と同様の設計方式が確立される。 そして必要に応じて、どれか一つの設計方式を用いるか、或いは複数のものを組み合わせてインタフェースのデザインを行なえばよいと考える。


森泰吉郎記念研究振興基金からの資金的援助を受け、今年度の研究活動において一定の成果を挙げることができた。 最後に厚く御礼申し上げたい。
また研究活動を遂行するに当り、取材に快く応じてくださった各メーカーに対しても感謝申し上げる。


Takahiro KATAGIRI / chau@sfc.keio.ac.jp
Last Update : January 24th, 2004