肺ガン関連遺伝子スプライスバリアントのPPI解析

 プルダウン実験の結果IVV実験において確認されたYwhaeとFos b-ZIPモチーフとの結合力は確認されなかった(図5).
 その理由としては実験操作に問題がないとすると3つの可能性が考えられた.第1の可能性としてはこの遺伝子とFos b-ZIP間の結合力はプルダウン法の検出感度以下であることが挙げられる.これはIVV実験で検出できた相互作用が正確であるとした時IVV実験はプレイとなるタンパク質を高濃度に濃縮しているためプルダウン法の検出感度以下の弱い相互作用についてもPPIの検出が可能であるという実験的特性に因る.第2の可能性としては機能性RNAとしてFos b-ZIPモチーフと結合していたことが考えられる.これはIVV法においてはC末端ラベル化法によってタンパク質とmRNAの複合体が形成されている状態に対し,プルダウン法においては同様のC末端ラベル化法によりmRNAではなく蛍光物質との複合体が形成されている.これに伴い,仮に翻訳前のmRNAに結合力があったと考えると本手法によって相互作用は検出されない.第3の可能性としてはIVV法において偽陽性として検出される配列を含んでいたことが考えられる.理由としてはこの遺伝子の一部に相当する配列は過去のIVV実験において1実験あたり1配列,総計2配列しか検出されていない事実が挙げられる.生体内において相互作用が存在するならばin vitroの系において相互作用物質の濃縮を行うIVV実験の結果においては同様の配列が複数検出されることが予想できるからである.  以上より,IVV法によって新規に確認されたこの肺ガン関連遺伝子のPPIについて確認することはできなかったが,IVV実験データから実験候補を選択する際の条件決定に有益なデータを得ることができたと考えている.

図5 (以下、図の説明)
レーン1:input(FOS b-ZIP),レーン2:Jun b-ZIP supernatant,レーン3:Jun b-ZIP elution(positive control),レーン4:対象遺伝子 full supernatant,レーン5:対象遺伝子 full elution,レーン6:対象遺伝子 motif supernatant,レーン7:対象遺伝子 motif elution,レーン8:対象遺伝子 variant supernatant,レーン9:対象遺伝子 variant elution,レーン10:baitなし supernatant,レーン11:baitなし elution(negative control),レーン12:レーン1と同様,レーン13:レーン3と同様,レーン14:レーン5と同様,レーン15:レーン7と同様,レーン16:レーン9と同様,レーン17:レーン11と同様.左側のゲルについては非特異的なバンドが存在するため相互作用が存在しないとは断定できないが,検証をおこなった右側のゲルについてはpositive control以外相互作用が確認されていないため本実験においては対象遺伝子に相互作用能力がないといえる.
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