現状の問題点と本研究の新規性

前節で述べたように、これまでのウェーブレットネットワークで研究が進められてきたのは主に関数近似問題についてであり、パターン認識については殆ど行われてこなかった。これはウェーブレットネットワークの発想自体がウェーブレット変換から生まれたものであり、信号処理分野の計算モデルであるという認識が強かったためだと思われる。実際、ウェーブレットネットワークを扱ったこれまでの研究では、``ウェーブレット係数を学習によって求める''という見方が支配的だ。しかしニューラルネットワークを用いて行われるパターン認識は一般に関数近似問題を解くよりも複雑性が高く、これまでのウェーブレットネットワークモデルでは十分な汎化性能と計算速度を確保することができない。

本研究では、このように単層ネットワークモデルでの関数近似にしか殆ど使われてこなかったウェーブレットネットワークに対して大幅な拡張を施す。ウェーブレットネットワークを多層モデルに拡張して、関数近似よりも複雑なパターン認識を可能にした点が本研究の新規性にあたる。それにより、音声という複雑なデータのパターン認識を可能にするようにその性能を向上させる。



root 2010-02-26