実存する物体を音源に使用する演奏装置の作成

政策・メディア研究科修士課程2年 土居真也
学籍番号:81025063
連絡先:doima@sfc.keio.ac.jp

概要

本研究は、コンピュータにより生成される電子音を用いた「コンピュータミュージック」を補完するものとして、物理的な現象を音源に用いて、「生の音」でその音響を模倣的に作り出すものである。ここで用いられる物理的な現象は録音ではなく、実空間においてコンピュータによりアクチュエータを駆動させることで、物理的な音源から音響を発生させ、その場で構築される音である。ここで構築される音は「コンピュータミュージックの音響要素」を持つものである。本研究では、コンピュータミュージックによって発展してきた領域を分析し、以下のようにその要素を定義した。

これらの要素は、人間による演奏では困難なものであり、音楽として活用された事例はあまりなかったが、コンピュータの導入により表現として確立されたものである。物理的に音響を生み出す装置は、音響彫刻や音を出すキネティックアートなどが存在している。また昨今では、物理現象を用いてビジュアライズを行なう作品も多く作られている。これらを元に、上記のようなコンピュータミュージックの音響要素を持つ物理的な音源をコントロールし、実空間で音を奏でるサウンドアートを作成する。そして、実空間に存在しているからこそ起こりうる、電子音にはない可能性や、新しい音響パターン、人と音との関わり方を提案する。

本研究による成果物

Mass Production
Mass Productionは枡が生み出す音響を楽しむ作品である。枡の下にはそれぞれ動力装置が組み込まれており、それによりますが移動する。枡はその中身を移動させながらも地震も移動する。それにより、枡の中身と枡自身の音が混ざりあい、リズムを生み出す。枡の素材や形状、入れるものを工夫することで、さまざまな音響をユーザが生み出すことができる装置である。またそれぞれの枡にはフィードバック機能がついている。枡が置かれたときに、その枡だけ動くように設計されている。
Mass Production Mass Production Mass Production
Takuboku
Takubokuは人が通ることで壁やパイプを演奏する装置である。近くに物体があるときに、このTakubokuは動作をする。そして壁をつつくことで、新しい音響現象を生み出す。人が何気なくする動きを捉え、そこから強制的に音を作り出すことで「気づき」を与え、そこから「演奏行為」に結びつくことを狙いとしている。
Takuboku Takuboku
Ryo-On
Ryo-Onはアルミダクトとバネからなる楽器である。アルミダクト自体が振動及び伸縮をすることでバネが振動し、アコースティックでありながらデジタルのような音を立てる。これはドローンミュージックの音に近いものである。Kienctを使い人の動きを検知し、その動きに反応するように動作する。また、人が直接筐体に触れることで、新しい音が生まれる可能性も持つ。
Ryo-On Ryo-On
Ryo-Onの発表
Ryo-OnをOpenResearchForum2011及びインターカレッジコンピュータ音楽コンサート2011で発表を行なった。ORF2011においては、ITmediaからの取材を受け、Ryo-Onが掲載された。
修士論文
本研究の成果を修士論文「コンピュータ音楽の要素を模倣する、 物理的な演奏装置の制作」としてまとめた。
修士論文へのリンク