ウェーブレット変換

4.3にある通り、全ての周波数帯において常に同じ分解能を持つことがSTFTの大きな特徴だが、これがウェーブレット変換では周波数帯ごとに異なる分解能を持つ。これを図4.5に示す。これは、低周波数帯では低い時間分解能と高い周波数分解能を、高周波数帯では高い時間分解能と低い周波数分解能を持つことを表している。ただし不確定性原理はここでも有効なため、周波数分解能と時間分解能は反比例の関係にある。

Figure 4.5: ウェーブレット変換の周波数分解能と時間分解能の関係図

ウェーブレット変換では、1つのマザーウェーブレットを様々な縮尺に引き延ばし、それらを時間軸上で平行移動させながら原信号に``あてがって''解析を行う。代表的なマザーウェーブレットであるMexicanHatを式(4.5)と図4.6に示す。


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Figure 4.6: MexicanHat

ウェーブレット変換は式(4.5)等のマザーウェーブレットを用いて式(4.6)のように表される。

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ここではウェーブレットのスケーリング係数で、周波数分解能はこれに依存する。はウェーブレットを時間軸上で平行移動させるための係数だ。なお、 の複素共役を表す。

このウェーブレット変換には逆変換が存在し、以下の式で定義される。

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のフーリエ変換を表し、式(4.8)はアドミッシブル条件と呼ばれ、逆変換が成立するためにはこれを満たす必要がある。この条件は時間軸上の極限でウェーブレットが十分に減衰し、かつ振動的な関数であることを意味し、以下の式で代用されることが多い。
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なおウェーブレット変換おいては、を``マザーウェーブレット''、を適用した を``ウェーブレット''と呼び、様々な値のを適用した の集合を``ウェーブレットの族''と呼ぶ。また、を``ウェーブレット係数''と呼ぶ。

root 2010-02-26