HOME > 産官学連携

産官学連携ケーススタディ
『協働による地域イノベーションを目指して』

SFC研究所で行われている産官学連携による様々な研究活動とその成果をケーススタディとしてご紹介いたします。(肩書きは掲載当時のものです)

>> バックナンバー

協働による地域イノベーションを目指して

実践を通じて地域の元気の具体的方策を探究する、これが飯盛義徳研究室の使命です。今まで、ペットボトルリサイクル装置開発、地域の高校生を対象とした起業家精神育成教材開発藤沢市でのビジネススクール推進インターネットを活用した地域の学びのコミュニティ形成などの研究プロジェクトに取り組んできました。学生たちは、全国各地に赴き、自治体、NPO、企業、学校など、地域のさまざまな方々との協働を実現しながら、企業にも自治体にも対処が難しい地域の問題解決を図り、社会に貢献することを目指しています。そして、プロジェクト実践、研究、教育の相乗効果をもたらし、地域から日本を元気にする大きな流れにつながればと念願しています。

今回は、研究室をあげて取り組んでいる、高校生のための起業家精神育成教材開発研究プロジェクト、福岡県東峰村における情報技術を活用した地域活性化研究プロジェクトについて概要を紹介します。

高校生のための起業家精神育成教材開発研究プロジェクト

飯盛研究室

2005年度、高校生の起業家精神育成のためにはビジネススクールで導入されているケースメソッドが有効ではという仮説のもとに、地域の高校生にふさわしいケース教材の開発、授業の構成など、実践を通じながら検証する「VITA+」が飯盛研究室で立ち上がり、佐賀県、高知県、和歌山県などで活動を行っています。

2005年度は、NPO法人鳳雛塾※(経済産業省「地域自律・民間活用型キャリア教育プロジェクト」)からの委託によって、高校生向けのケース教材を8点開発し、『高校生のための起業家精神育成教材集』にまとめました。これらの教材を活用し、高知県立大方高等学校で2回、佐賀県立牛津高等学校、佐賀県立佐賀商業高等学校でそれぞれ1回、VITA+のメンバーが講師となって、ケースメソッド授業を実践しました。さらに、大方町雇用促進協議会(文部科学省事業)の委託によって、地域活性化を目的とした人材育成e-Learning教材を2点開発しました。

2006年度は、NPO法人鳳雛塾からの委託で、ケース教材を2点、まちづくりを担う若者を育成するe-Learning教材を1点開発しました。また、授業カリキュラム開発にも積極的に関わり、牛津高等学校で5回、大方高等学校(遠隔授業)で1回のケースメソッド授業を実践し、その効果を検証しました。さらに、SFC政策研究支援機構から助成をいただき、世界遺産である熊野古道に関するケース教材を開発し、11月に和歌山県立新宮高等学校でケースメソッド授業を実践しました。

高校生を対象としたケースメソッド授業は、全国でも先進的な試みです。試行錯誤の中での研究プロジェクトではありますが、地元のイベント、商店街などを題材としたケース教材は、高校生に十分に受け入れられることなどが判明しました。また、地元の事例を取り上げることで、授業には、自治体やNPOの職員、大学教員、企業関係者なども生徒と一緒に議論に参加し、高校を核とした地域の協働がもたらされる可能性があることがわかりました。受講した高校生の行動力が格段に高まったなどの評価もいただき、今後はさらに他地域での研究、実践を通して、一般化の可能性をより追求していきたいと考えています。

福岡県東峰村における情報技術を活用した地域活性化研究プロジェクト

飯盛研究室

2006年度、福岡県東峰村からの委託によって、情報技術を活用した地域活性化の具体的方策を検討する研究プロジェクト、「情報技術による東峰村の活性化戦略研究会」が立ち上がりました。プロジェクトの推進においては、飯盛研究室の多数の学生たちが東峰村に赴き、役場、村の方々と一緒になって地域の問題解決の主体として活躍しています。

2000年以降、ブロードバンドの普及率が大幅に高まり、全国各地で数々の地域情報化プロジェクトが立ち上がっています。地域情報化プロジェクトとは、情報技術の利活用を通じて一定地域の生活、産業、医療、教育などに関する問題解決をはかることによって地域の活性化を目指す一連の活動です。昨今では、自治体にも企業にも対処が難しい地域の問題を解決する可能性に期待が集まりつつあります。しかし、成果はこれからの段階であり、情報技術が地域活性化の「銀の弾」になり得ていないのが現状です。情報技術を活用して地域活性化を目指す上で重要なポイントは、インフラの整備だけにとどまらず、地域の資源を再認識し、それを編集していくプロセスにあると考えています。このような活動の中で、新しいつながりが形成され、方向性に対しての意味付けが行われ、一体感が芽生えていきます。そのためには、地域の方々の協働をもたらし、思いを広めていくリーダー(プロデューサー)の存在、地域活性化に関心のある方々の切磋琢磨できるコミュニティ形成が大切です。

そこで、本研究プロジェクトでは、地域情報化の分野で一定の評価があり各地にも伝播している、住民ディレクター(映像制作プロセスを通じた総合的な企画力の養成)、インターネット市民塾(いつでも、どこでも、だれでも講師、受講生になれる学びの共同体)、鳳雛塾(地域をテーマにした教材を活用したディスカッション教育による戦略的思考の涵養)の活動を東峰村に導入し、地域における人と人との新しいつながりを形成し、地域活性化を担うリーダーを育成することを目指しています。そして、村の方々と学生たちによって作成された、地域資源に関するコンテンツを発信し、東峰村のファンを内外に増やしていこうと考えています。始まったばかりの研究プロジェクトですが、驚くほどたくさんの方々に参加いただき、明らかに東峰村の活性化への関心は高まっています。また、今までの取り組みをケース教材としてまとめ、地域のリーダー育成にも活用できるようにしています。今後は、村の方々を中心に、東峰村の活性化戦略を実行に移すべく、その具体的方策について検討を重ねていきたいと思います。

※NPO法人鳳雛塾は、情報技術を駆使したアントルプレナー育成スクール。地域の企業を題材とした独自開発の教材(映像教材も含む)を活用したケースメソッドを導入しているところに特徴がある。1999年に佐賀市に設立され、2005年にNPO法人化。理事長は佐賀銀行会長の指山弘養氏、副理事長(ファウンダー)に飯盛義徳専任講師が就任。若手社会人の他、学生、経営者、自治体の職員など、地域の多彩な人々が熱心に参加し、2006年までに約300人が卒塾。多くの塾生が、ベンチャー、NPO起業、新事業の立ち上げを実現。2002年度から小学校でのアントルプレナー育成教育事業に取り組み、2003年度からは高校にも発展。2004年度、富山鳳雛塾が設立され、各地でも設立が検討されている。2003年度、日経地域情報化大賞日本経済新聞社賞受賞。

→「地域の高校生を対象とした起業家精神育成教材開発」
→「藤沢市でのビジネススクール推進」
→「インターネットを活用した地域の学びのコミュニティ形成」
→「福岡県東峰村」ウェブサイト
→「NPO法人鳳雛塾」ウェブサイト

(掲載日:2007/3/29)

バックナンバー

産官学連携ケーススタディ過去の記事はこちらからご覧いただけます。