2011年度学術交流支援資金報告書

空間的時間的ユビキタス化された社会における
旅を支援するインタラクションの提案と実践

環境情報学部
安村通晃
インタラクションデザインプロジェクト(IDP)

目次

  1. 研究概要
    1. 概要
    2. メンバー
    3. 目的
  2. 研究背景
  3. 研究内容
  4. 展示会
  5. トークセッション
  6. アンケート
  7. まとめ
  8. 報道・対外発表
  9. 謝辞
  10. 連絡先

研究概要

概要

安村研究室ではインタラクションデザインを実世界に適用するという観点により、これまで、家展、電車展、カフェ展、おしゃれ展、時間展、ワークプレイス展、学び展を開催してきた。今回我々は、「旅」に着目し、旅展を開催すると同時に、旅に関するインタフェースデザインの研究を行なった。

メンバー

教員

  • 安村 通晃 (環境情報学部教授)
  • 樋口 文人 (環境情報学部非常勤講師)

研究員

  • 佐藤 剛史(JR東日本特別研究員)

大学院生

  • 上野 大樹(政策・メディア研究科博士課程2年)
  • 藤沢 和哉(政策・メディア研究科修士課程2年)
  • 元良 龍太郎(政策・メディア研究科修士課程2年)
  • 吉原 建(政策・メディア研究科修士課程2年)
  • 秋山 博紀(政策・メディア研究科修士課程1年)
  • 山本 伶(政策・メディア研究科修士課程1年)
  • 白崎 琢也(政策・メディア研究科修士課程1年)

学部生

  • 加藤 可奈(環境情報学部4年)
  • 細矢 つかさ(環境情報学部4年)
  • 三浦 直也(環境情報学部4年)
  • 首藤 まり江(環境情報学部4年)
  • 戸塚 翔三(環境情報学部4年)
  • 岩崎 恵美(環境情報学部3年)
  • 馬場 匠見(総合政策学部3年)
  • 川嶋 裕香(環境情報学部3年)
  • 三谷 真梨奈(環境情報学部2年)
  • 上原 由理絵(環境情報学部2年)
  • 足立 丈典(環境情報学部2年)
  • 海宝 竜也(環境情報学部2年)

目的

我々は、交通網・通信網の整備や情報機器の普及などの変化にともなって生まれる新たな「旅」をインタラクション研究の新たなフィールドと捉え、生活コンピューティング、ヒューマンインタフェース研究の実践の場として旅に着目し、次世代に求められるインタラクションデザインを実践する。我々は、研究の早い段階で体験可能なプロトタイプを作製し、実社会からの評価を取り入れ、よりアカデミックな学会発表や論文投稿につなげることを目的としてまなび展を企画した。

研究背景

「旅」とは通常比較的長い期間の外出を指すことが多いが、本研究で扱う「旅」はその範囲を広げ、余暇の時間を利用し、非日常的な体験をすることを目的とした外出の全般を「旅」と呼称する。「旅」には短距離短時間の散歩程度 のものから、地球を一周するような長距離長期間のものまでを含むものとして取り扱う。

交通手段の発達によって、距離の面からも時間の面からも「旅」に出ることへの障壁は下がり、また情報技術の発達によって、現地に行かずにその様子を知ることができるようになった。このような「旅」をとりまく状況の変化によって、人々が「旅」に求めている性質も大きく変化していくことが考えられる。写真や映像からは得ることのできない自分自身の身体的験を求める「旅」や、「自分探し」など自分自身の内面の変化を求める「旅」、あるいはこれまで観光スポットとして捉えられてこなかったような場所や日常的に訪れるような場所を再発見するような「旅」などが、これまでにはあまり注目されてこなかった「旅」のあらたなスタイルとして考えられる。

これまでの「旅」の支援はどちらかと言えば「旅」を受け入れる側の視点のものが中心であり、観光ガイドやツアーなどを通して「観光スポットに人を連れてくる」ことを目的としたものが多かった。こういったサービスでは前述の新しい「旅」のスタイルに対応していくことが難しく、より「旅」をする人の側の視点に立った支援が求められている。

以前であれば「旅」に出る際には紙の地図帳やガイドブックが携行されていたが、近年ではその役割をスマートフォンに代表される小型のインターネットデバイスが代替することも多くなった。これらのデバイスにはカメラの機能や GPS や地磁気センサーや近距離無線通信といった、移動先で活躍する機能が数多く搭載されており、これらの機能や情報システムを活用しつつ、「旅」に出るユーザーの行為・活動を調査・観察し、ヒューマンインタフェースの発想を取り入れることが、時代のニーズに合致した新しい「旅」の重要な要素となる。

研究内容

交通網・情報通信網が発達し、さまざまな情報機器が普及していくこれからの世の中において、旅のあり方はより多様化され、ひとりひとりにとってその旅が持つ意味は変わっていくであろうと考えられる。安村研究室では、ひとりひとりがそのような新しい世の中において発生するであろう旅の準備段階、旅の途中、旅の終わりに必要とされるであろうインタラクションについて提案を行い、プロトタイプを実装した。各プロトタイプの詳細は、個別のページを参照のこと。

展示会

研究の早い段階から体験可能なプロトタイプを実装し、実社会からの評価を取り入れ、よりアカデミックな学会発表や論文投稿に活かす目的として「旅展」を以下の概要で実施した。

開催日時
2011年9月8日(木)11:00〜18:00
2011年9月9日(金)11:00〜19:00
2011年9月10日(土)11:00〜18:00
展示会場
3331 Arts Chiyoda
〒101-0021 東京都千代田区外神田6丁目11-14
公式Webサイト
http://ylab.sfc.keio.ac.jp/tabi-ten/

トークセッション

「旅」を考える様々な視点を知るため、以下3つのトークセッションを開催した。各回とも好評を博しての盛況となった。また、活発な質疑応答もみられた。

日本人の旅、こころの旅

開催日時
2011年9月8日(木)13:30 - 15:00
ゲスト
佐伯 剛 (風の旅人 編集長)
村山 香苗 (JR東日本 大人の休日倶楽部)

果てしなく、女の旅欲

開催日時
2011年9月9日(金)14:00 - 15:30
ゲスト
山本 貴代 (女の欲望ラボ代表/女性生活アナリスト)
小川 克彦 (慶應義塾大学 環境情報学部)

旅とメディア

開催日時
2011年9月10日(土)14:00 - 15:30
ゲスト
メレ山 メレ子 (秋田犬「わさお」をブレイクさせたカリスマブロガー)

アンケート

以下の内容で旅展期間中、来場者に対してアンケートを実施した。

実施期間
2011年9月8日(木)~2011年9月10日(土)
実施方法
質問紙による手書き回答(選択式、自由回答式)

展示会全体について

「旅展」を何で知りましたか

1日目2日目3日目合計
開催案内メール 5 6 10 21
旅展Webサイト 3 5 7 15
友人・知人 16 28 56 100
新聞・雑誌・Webサイト 2 2 5 9
その他 8 3 55 66
合計 34 44 133 211

「旅」というテーマに興味を持てましたか

1日目2日目3日目合計
1(持てなかった) 3 0 2 5
0 0 1 1
3 3 11 17
4 12 13 29
5(持てた) 23 41 66 130
合計 33 56 93 182
平均(重み付け) 4.42 4.684.50 4.53

会場の雰囲気はテーマとマッチしていましたか

1日目2日目3日目合計
1(していなかった) 2 2 8 14
1 1 4 6
7 15 3 25
7 10 11 28
5(していた) 14 25 39 78
合計 31 53 65 151
平均(重み付け) 3.97 4.04 4.063.99

スタッフの説明はわかりやすかったですか

1日目2日目3日目合計
1(わかりにくい) 1 0 1 2
0 0 0 0
4 3 11 18
8 10 15 33
5(わかりやすい) 22 38 50 110
合計 35 51 77 163
平均(重み付け) 4.43 4.69 4.464.53

展示作品について

興味を持った作品がありましたら、教えてください(複数回答可)

1日目2日目3日目合計
Journey Relay 5 15 18 38
ステップナビ 5 12 21 38
CQ Submarine 8 28 39 75
くも落とし 15 31 44 90
旅まんびゅう 10 21 37 68
AR不思議NAVI 6 8 19 33
メタボパッカー 4 15 20 39
MemoryPointer 8 12 9 29
自分用バスガイドさん 8 8 11 26
旅バンク 1 1 2 4
新天地へようこそ 5 0 3 8
ぶらっと鉄道の旅支援 2 11 20 33

実際に使ってみたい作品がありましたら、教えてください(複数回答可)

1日目2日目3日目合計
Journey Relay 6 4 11 2
ステップナビ 4 14 23 41
CQ Submarine 2 13 20 35
くも落とし 11 30 36 77
旅まんびゅう 7 12 16 35
AR不思議NAVI 1 2 19 22
メタボパッカー 2 3 7 12
MemoryPointer 6 14 8 28
自分用バスガイドさん 2 3 7 12
旅バンク 1 0 17 18
新天地へようこそ 3 1 4 8
ぶらっと鉄道の旅支援 1 11 18 30

その他、作品へのご意見・感想がありましたら、教えてください

意見多数につき、一部のみ抜粋。

トークセッションについて

トークセッションは面白い・興味深いものでしたでしょうか?ご意見、感想などがありましたら教えてください

意見多数につき、一部のみ抜粋。

1日目「日本人の旅、こころの旅」

2日目「果てしなく、女の旅欲」

3日目「旅とメディア」

「旅」について

ご自身にとって、最も印象深い「旅」のエピソードを教えてください

ご自身にとって、最も印象深い「非日常的な体験」のエピソードを教えてください

その他のご意見、ご感想や安村研への要望、今後扱ってほしい展示会テーマなど、なんでもご自由にご記入下さい

まとめ

本プロジェクトの実施により、交通網・情報通信網が発達した新しい社会において求められる旅のスタイルに関する研究と、その中で求められるインタラクションデザインを研究した。その取り組みの一環として我々は研究の早期に体験可能なプロトタイプの作製し、実社会からの評価を取り入れることができた。今後その評価をもとに研究を深め、よりアカデミックな学会発表や論文投稿につなげる。

報道・対外発表

報道

青森放送 ニュートンのリンゴ「目指せ!未来の発明王!」
2011年10月16日(日)17:00~17:15 放送

対外発表

謝辞

本プロジェクト実施において、その研究遂行に協力いただいた安村研究室(Interaction Design Project)の教員・学生の皆様、そして約200名にのぼる来場者の皆様に感謝したい。

本研究は、2011年度学術交流支援資金の支援の下に行われた。

連絡先

慶応義塾大学環境情報学部 安村研究室
http://ylab.sfc.keio.ac.jp/