第2章:子音の分類と音声的特徴


韓国と北朝鮮で定めた標準語は、同然ながら異なる。首都を中心にした言葉を標準語として定めているからであろう。

朝鮮王朝が開国した13世紀から、韓国はソウル地域を中心とした京幾方言(きょうんぎ)を標準語に、北朝鮮はピョンヤン地域を中心としたピョンヤン方言を標準語としている。

こういったことから、発音から見る両国の発話パターンはかなり異なり、特に発音とイントネーション、そしてアクセントもさまざまである。この理由で表記法まで異なってしまうケースもそんなに難しくない。

この章では、両国の子音における音声学的相違点を探り、発音における両国言語の違いを考えてみる。

 

現代音声学では音声分析器材を使って、主に有声性(Voicing)、有気性(Aspiration)、緊張性(Tenseness)、鼻腔性(Nasality)、音長(Duration)、発声待機時間(Voice Onset Time)、同時調音(Coarticulation)などの研究を通じて子音の特徴を研究する。韓国語における子音研究もそれらと同じで、特に韓国語において意味判別を行う機能である音長はもちろん、こういった研究が活発に行われている。一方、北朝鮮では子音を分類する基準として有声性(Voicing)、有気性(Aspiration)、緊張性(Tenseness)、音長(Duration)を研究するといいながらほとんどの子音研究における音響学的研究が音長(Duration)だけになっている。

1990年代に入り、きむ・そんぐん、かん・じんちょるといった学者によって音長以外の研究が行われてきているが、ほとんどの子音研究がとても幅狭い感じがする。

北朝鮮で発表された音長に関する研究のほとんどが次のような結果になっている。

文化語(北朝鮮の標準語)において「n、m、r、en」のような有声子音は、音声学的側面から見ると母音に近い音であるということである。こういった有声子音は、発音される際に声帯が振動しても唇、口、喉で、音を出す息自体が障害を受けるので「n、m、r、en」といった子音は母音よりは強く発音できないと主張している。ここから韓国側が主張している子音の発話モデルとかなり違っている。

 

1.1 子音の音響音声学的特質

まず、文化語では鼻音「n、m、en」を発音するときには息が鼻を通じて外に出る。この時、息が鼻を中から出すか口の中から出すかを分別してくれるのが、Uvularが行う。音響音声学的に「n」が最初の音であるときには、その長さが平均40―50Msecであり、最後の音であるときは60―180 Msecである。子音「m」のように「n」の長さも他の子音の結合特徴からその長さが異なってくることを指摘している。「m」を発音するときは、舌は自由な位置におく。

例)mo-du(すべて), ma-chi(まるで):50―60 Msec

ji-gem(今),deom-boeng(すべすべ):80―250 Msec

 

これは、韓国語の同じ子音発音より平均20―30 Msecほど長いということを意味している。京幾地域方言とピョンヤン方言の子音発音の相違から生じる問題と簡単に説明している学者もいるが、子音使用の頻度数や文章の長さに関係するより複合的要素から生じる問題ではないかと予測してみる。

 

1.2 文節音の音長(Duration)

言葉における音声の音響的立場から見たら、普通発話される声が激音より長いと北朝鮮の学者達は主張する。単語でわかる発話の長さ(音長)を調べてみると、次のようなデータが出た。

これは8月に行った延辺地域の現地調査でわかったデータである。単位はすべてMsecである。

 

「k」56 「kk」19 「b」35 「bb」11

「d」47 「dd」12 「z」59 「zz」40

 

上記でわかるように、普通発話音は激音より音響的長さが2―2.5倍も長く現れる。しかし、「s、ss」の場合は「s」が「ss」よりも音の長さが約100Msecも短いが、これは「ss」発音を出すときに息が止まらなく、小さな穴を通じて漏れる仕組みから発音部分が振動するからである

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TAE-MIN UM <tum17@mag.keio.ac.jp >