本研究は、ネットワーク接続されたホスト間を移動可能なアプリケーションを 記述するためのライブラリ開発を目的とした。当初本ライブラリには、以下の 緒機構を提供することを目標としていた。
- 機構[1]:可変粒度の移動機構
アプリケーション中の任意のオブジェクトを選択して遠隔ホストに移送可能で ある。
- 機構[2]:ホスト位置透過機構
移送対象アプリケーションが特定のホストに依存することなく透過的に動作す る。- 機構[3]:適応的QOS制御機構
移送対象アプリケーションが移送先ホスト環境に動的に適応可能である。
上記研究概要を実現するために、本研究ではホスト透過型オブジェクト移送シ ステム(Mogul)を開発した。上記各機構の実現手法について以下に述べる。
- 可変粒度の移動機構
Mogulでは、Java AWT APIにおいてユーザインタフェースを構築するクラスを 拡張することによって、アプリケーション中のユーザインタフェースオブジェ クト一つを最小粒度として移動可能である。具体的な実装手法に関しては、文献[1]に示し、発表した。
- ホスト位置透過機構
Mogulでは、移送対象オブジェクトが移送元ホスト上のホスト依存サービスを 参照する場合、同オブジェクトのスタブオブジェクトを動的に生成し、移送先 ホスト上でのメソッド呼び出しを移送元ホストへリダイレクトする。本機構を ダイナミックメソッドリダイレクションと呼ぶ。本機構の具体的な実現手法に 関しては、文献[2]に示した。
- 適応的QOS制御機構
Mogulでは、移送対象アプリケーションが移送先ホストに動的に適応し、均質 なサービスを提供するために、移送先ホスト環境の検知機構を実現した。本機 構では、当該アプリケーションの移送時に、移送先ホストの描画性能をはじめ とする環境がイベントとしてアプリケーションに通知される。これによって移 送対象アプリケーションのプログラマは、移送先ホスト環境への適応機能を提 供できる。本機構に関しては、文献[3]に示し、発表した。
本年度は、機構[1]および[3]を含んだVersion.2を公開し、現在これに加えて 機構[2]を含んだVersion.3を開発中である。以下にVersion.2の取り扱い説明 書および公開ソフトウエアを添付する。取り扱い説明書
今年度は以下の学会および論文誌に論文を投稿した。ただし、文献[2]は現在 査読中である。 [1] 中澤、望月、徳田、"Mogul: 位置透過型分散共有ツールキットライブラリ "、情報処理学会OS研究会、1998年5月、沖縄、 [PostScript | PDF][2] 中澤、望月、徳田、"ホスト透過型オブジェクト移送システムMogulの実現 "、情報処理学会論文誌掲載予定
[3] 中澤、喜多山、徳田、"SMAFシステム:適応敵ユーザインタフェース移送 の実現"、情報処理学会全国大会、1998年10月、名古屋、 [PostScript | PDF]