III. <事例研究>大学のグローバル化戦略

国際交流、グローバル化にかかわる分野で先進的といわれる取り組みを進めている大学について、一定のガイドラインに沿って聞き取り調査をおこなった。調査にあたっては、個々の大学においてどのように中長期のグローバル化の方針が策定されているか、それを実現させていくプロセス(合意形成、意思決定、システム・組織作り)などに焦点をあてた。

一方で、大学におけるグローバル化の課題を画一的に定義することが困難なものであることも明らかである。そもそも「国際化する」「グローバル化する」ことを目的として中長期計画や戦略目標を立てること自体が不自然である、という議論もある。今回の調査でも、大学の存立基盤がまさにグローバルであるので、「特別にグローバル化、国際化を目的としていない」という大学もあった。大学のミッションを追求していく過程で「気が付いたらグローバル化された環境ができていた」というのが理想的な姿であるかもしれない。しかし、ほとんどの日本の大学においては、個々の研究者レベルで専門分野ごとに国際的な学術交流を展開していても、大学が組織として交流の成果を蓄積し、教育・研究環境を国際化することは困難な状況になっている。その原因を論ずる前に、そのような大学においては、「気が付いたらキャンパス環境がグローバル化されていた」ということは期待できないことは明らかである。したがって多くの日本の大学においては、国際化、グローバル化のための具体的課題を設定し、その目標に向かって意識的なアクションを起こしていくことが求められている。
 
2月24日現在、調査を実施した大学およぼ調査を予定している大学は以下のとおりである。

        早稲田大学(2月18日)
        国際大学(2月18日)
        立命館大学(2月1日)
        名古屋大学(3月22日:予定)
        南山大学(3月21日:予定)
        会津大学(2月8日)

上記の各大学に対して、以下のようなガイドラインを設けて、聞き取り調査をおこなうこととした。

<インタビューのガイドライン>

  1.  キャンパス・グローバル化についての指針や中・長期方針について
    文書化された方針があるか?具体的(数値)目標は設定されているか?
    現状の問題点をどう把握しているか?
    議論し意見が形成されるプロセスは?
  2. グローバル化の中・長期方針がキャンパス内でどのように浸透しているか?
    組織内で認知されているか。
    方針の実現性をどこまで検討し、認識を共有しているか?
  3. 学内の組織、執行機関、リソース
    留学生の受入れ、交換留学、学術交流などの分野で、方針に見合った組織体制ができているか。
    機能として、欠けているものは何か。また、財源や人材をどう確保しているか?
  4. 人事
    方針に対応した人事配置をおこなっているか?欠けている人事は何か?
    教職員スタッフの多国籍化についてはどのように進捗しているか。
  5. 人材育成
    グローバル化に対応さうるFDやSDをどの程度すすめているか。
  6. 教育・教育交流プログラム
    既存のカリキュラムと国際教育(交流)プログラムは整合性が保たれているか?
  7. 自己評価機能
    グローバル化の取り組みについて、どのような自己評価機能を持っているか。
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