2.大学院留学生入試制度に関する調査


 
  この調査の趣旨は、「大学院における留学生入試のあり方を実態調査することを 通じて、個々の大学がどのようなグローバル化の構想や戦略をえがいているか、 について検討を加える。」ことにあった。しかし、入試制度からだけでは大学の 全体像に迫ることには限界があり、また多くの大学では留学生の受入れについ て、戦略的な目標をたてているというよりは、他大学と同様に実施しようとする 横並び志向や現状追認型の制度を実施しているという傾向も存在していることが わかってきた。

  調査対象の大学院は、留学生特別入試を実施しているか、海外出願を受け付けて いるもののなかから、留学生数が多い30の研究科を選び、各研究科での留学生 受入れについて、現状の成果や問題点を明らかにするための調査を実施した。
 

調査概要
 「1998年度留学生のための大学院案内」(財団法人アジア学生文化協会)の おいては、各大学院研究科での願書の入試の状況について、以下のような区分を 設けている。

1) 留学生特別入試を実施しているか?
2) 海外出願を受け付けているか?

  このうち、特に「海外出願を受け付けているか」という設問に対する大学側の回 答がまちまちである。多くの大学で「海外に居住するものが出願できるか」とい う意味に取っているようだが、「入試にあたって、来日して受験することを義務 づけているか?」という趣旨にもとれるため、大学によって誤解している場合が 多いようである。結論からいえば、殆どの大学院で、すでに来日して大学(学 部)や日本語学校で学んでいる学生を主体に考えていることがわかった。
 上記1)、2)の設問に対する回答を以下のように区分した。

 
海外からの出願 Yes
海外からの出願 No
留学生特別入試実施Yes
東京外大、 早稲田大など 東京学芸大、 大阪大 など
留学生特別入試実施No
東大(工学系)、 国際大など 東大(総合)、立正大 など

 今回、調査対象としては、Cのカテゴリーを除き、それぞれのカテゴリーの上位 10校について、聞き取り調査を実施した。
  以下のような質問項目について、電話およびFAXでの調査を実施し、現在集計中 である。

<質問事項>

1)ポリシー
  留学生の受入れにかかわる方針は学内でどのように決定しているか?(意思決定 プロセスについての調査)学内でこうした方針を文章化したものがあるか?(例 えば、「中長期の国際化指針」のようなもの。)あれば入手したい。
2)システム・組織
  留学生の入試制度全般について、学内での担当組織はどのような構成になってい るか。(留学生担当の専任職員または教官がいるか。)組織図などがあれば入手 したい。
3)広報
  例えば、HPは英語化(多言語化)しているか。(事前にHPをチェックする。)ま た、他の方法での広報(国際教育協会AIEJが実施する日本留学フェアなど)を実 施しているか。
4)要綱の配布方法
  海外居住者にも要綱は送付しているか。
5)入試
  受験に際して、試験日に来日して受験することを義務づけているか(その場合の ビザのサポートはどうしているか)。あるいは、渡日前受験を認めているか。
6)出願書類
  一般的な卒業証明などのほかに、「研究計画書」など特別な書類の提出を義務づ けているか。
7)指導教官
  留学生の出願にあたって、指導教官の予定者に事前に了解をとっておくなどの取 り扱いを行なっているケースはありますか?実態として、出願時点で指導教官が 決まっていることが多いのでしょうか?
8)志願者数・定員と留学生の割合
  1999年度春の入試実績として以下の資料を知りたい。 修士課程1学年の定員 1999年度入学した留学生数 志願者数(および留学生受験者数)
9)日本語要件
  日本語能力試験(1級)を要件としているのが一般的だが、なにか独自の基準を 設けているか。

 

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