本研究では、P2P型ファイル共有サービスにおける問題点として「自発性への 依存」に注目し、個々のユーザ行動がシステム全体へ与える影響について検証 する。その具体的事例として、代表的なP2P型ファイル共有サービスである Gnutellaを取り上げる。
自律分散システムは、自律分散協調システムと呼ぶこともあり、個々の構成要 素が自律的にその振舞を決定すると同時に、要素間の協調を図ることがその基 本的要件となっている[]。しかしGnutellaのように、このような要 素間の協調を担保するものがユーザの自発性であるとき、協調関係が崩れ、サー ビスに支障を来たす可能性がある。
本研究の目的は、P2P型ファイル共有サービスの自律分散性に伴う問題のうち、 ユーザの自発性、およびフリーライディングと呼ばれる利己的ユーザ行動に起 因する問題を取り上げ、ユーザ行動とそのシステム全体への影響に関する包括 的なモデルを提示することである。