本研究において,さまざまな種類のセンサから取得した情報を,言葉という一 つのメタデータに抽象化したものを名前と定義する.名前の例としては,SFC, 生協,暑い,雨などが挙げられる.また,名前はカテゴリごとにまとめられる. 図2に名前の例を示す.この図では,GPS,PHS,赤外線タグと いう位置情報を取得可能な三種類の異なるセンサからセンサ情報を取得してい る.これらのセンサから取得できるセンサ情報は異なる形式で表され,異なる 値を持つ.しかし,これらのセンサ情報はすべてShonan Fujisawa Campusとい う同じ場所を示す.従って,これらのセンサ情報に対してShonan Fujisawa Campasという名前を付けることにより,センサ情報と名前とのマッピングが可 能となる.
名前付け,つまりセンサ情報と名前の変換マップを作成することにより,状況 適応型アプリケーションはユーザがおかれている状況をセンサ情報ではなく, 名前で扱うことが可能となる.そのため,センサデバイスやセンサデバイスに 依存するセンサ情報を意識する必要はない.名前付けはR2システムを使用する ユーザが行う.
本研究は特定の個人を対象としている.そのため,名前が一意である必要性は ない.例えば,生協という名前を付けた場合,ユーザAにとっては慶應義塾大 学湘南藤沢キャンパスの生協を暗黙のうちに示すが,別のユーザBにとっては 東京大学の生協を表す事があってもよい.このように,同じ名前でも異なる意 味を有する場合がある.しかし,名前には他者と共有できる名前も存在する. 例えば,位置カテゴリにおける東京タワーなどの一般的な名前は万人に共通で ある.従って,名前は二種類に分類できる.
Public Nameは共有,交換が可能である.そのため,ユーザはすべてのセンサ 情報に対して名前を付ける必要はなく,そのユーザ個人が必要なセンサ情報の み名前を付ければよい.Public NameはユーザがWWWなどで配布することを考え ている.また,そのユーザ状況にあったPublic Nameをその場で読み込むこと が可能である.これによりユーザが携帯しているコンピュータに常に多くの変 換マップを保持する必要はない.