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遅延

本小節ではShepherdによるVPNを介した通信のノード間の遅延を評価した. 本評価では,ICMPパケットの往復時間であるRTT (Round Trip Time) を遅延の指標とし, RTTの測定にはpingを用いた.またICMPパケットのペイロードサイズを56バイトとした.

ノード1からノード4に対して, 1回のRTT計測毎に0秒から1秒までのランダムな時間を空け, RTTの計測を100回行った. また,ARP要求・応答による遅延の影響を除外するため, RTT計測前に一度ICMPパケットを送受信し,送信元・送信先ノードにARPをキャッシュさせた. 計測結果を図6 に示す.

Figure: RTTの計測結果

\includegraphics[width=7cm, clip]{figure/rtt.eps}

6 のグラフの縦軸はRTT (msec) を表し, 横軸のShepherdはShepherdによるVPNを介したRTT計測結果, No Shepherd はShepherdによるVPNを介さない通常のRTT計測結果を表す. No Shepherd の場合RTTの中央値は0.373msecとなり,ばらつきは小さかった. Shepherd の場合RTTの中央値は3.215msecとなり, No Shepherd と比較してRTTの中央値は2.842msec増加し,ばらつきも大きくなった.

ShepherdがNo Shepherd と比較してRTTが増加した原因として, 転送回数の増加と転送処理の増加が挙げられる. No Shepherdの場合のICMPパケットはノード1 → ルータ →ノード4の順に転送されるが, Shepherdの場合のICMPパケットはノード1 → ノード2 → ルータ → ノード3 →ノード4の順に転送される. このためネットワークを介した転送回数が増加し,RTT増加の原因の一つになったと考えられる. また,ノード2とノード3による転送処理はOSのプロトコルスタックによるものだけではなく, ShepherdのProxy Moduleを介した転送処理が増加している.

RDTSC (ReaD-Time Stamp Counter) 命令を用い, ノード2・3におけるShepherdの転送処理時間を算出した. 計測の結果, ノード2においてノード3へのEthernetフレーム送信処理時間が全体の割合の0.6を占め, ノード3においてノード4へのEthernetフレーム送信処理時間が全体の割合の0.53を占めた. 共にEthernetフレーム送信処理が転送処理時間で最も割合が高く, スレッドを用いた処理並列化などによって改善される可能性がある.

増加した2.842msecというRTTの値は インターネットを介した通信では定常的に観測できる値であるため,大きな問題にはならない.



root 2007-03-08