研究主題:「生物相との関係から見た都市緑地・河川の評価」
1.生物指標による都市河川のコリドーとしての機能性とその連続性の評価に向けた研究
・今年度調査を行い、現在分析及びにまとめを行っている。
都市におけるエコロジカル・ネットワークの確立において、中小の都市河川の役割は非常に重要視されており、近年の緑の基本計画などでは地域内を流れる河川をコリドーとして機能させたものが多く見られる。しかしながら、生物情報に基づいた計画は少なく、さらに中小河川のコリドーとしての機能は殆ど実証されていない。そこで、都市河川が生物の生息空間・移動経路としてどのような機能を果たしているのか明らかにすることを目的とする。
トンボ類を指標に、その分布状況と河川構造・護岸の形状などとの関係を基礎的な情報からの把握を目指す。生息空間のモデリングを行うとともに、都市河川のハビタットとしての機能性を調べた。環境情報と個々の種の生息の関係性を一般化線形モデルを用いて明らかにし、種組成から連続性の評価と分断要因の推定を試みている。さらに、環境の連続性を評価するための手法を考案し、将来的な計画策定に向けた指針の提示を目指している。
2.東京湾沿岸部埋立地における緑被分類とバッタ相の関係について
・今年度調査を行い、現在分析及びにまとめを行っている。
本研究は、大都市圏の臨海埋立地の緑地の質を生物の視点から把握することを目的とした。人工地盤である埋立地の緑地環境を、生態的な機能から区分、記述する手法はこれまで十分検討されていない。研究では、緑地構造との関係が密接、かつ人工的に創出された緑地空間に生息が期待できる生物として、バッタ類(バッタ・キリギリス・コオロギ)を選定し、生息状況と緑地環境の関係性から、臨海部のビオトープタイプを検討した。調査は、踏み分け法とスイーピング法を用い、公園や緑道、植栽帯などの計71 箇所で出現個体数とその種の記録を行った。
生物生息情報との緑地環境との関係を解析は、衛星写真から作成した緑被分類図を基づいて行った。TWINSPANによるグループ化を行い、その種群がどんな影響を受けているのかをパーティション分析によって明らかにした。その結果、50m周囲の緑被地、50m周囲の常緑樹林地、50m周囲のマツ林地の影響を受けていることがわかった。
4.神奈川県小出川の上流部におけるトンボ類の生息環境の選好性
・昨年度までに調査を行い、今年度分析及びにまとめを行った。
谷戸内の小河川におけるトンボ類の生息環境の選好性を把握するために、相模川支川の小出川(神奈川県藤沢市・茅ヶ崎市)の上流部において、2007 年3 月から10 月の間にトンボ類の成虫と幼虫の調査を行った。成虫は毎月1 回、幼虫は隔月1回調査を実施し、成虫・幼虫を合わせ10 種、695 個体記録された。遠藤笹窪谷より下流のコンクリート護岸された範囲には、トンボ類の成虫は他の範囲と同程度の個体数が確認されたが、幼虫はほとんど生息していなかった。小河川の様々な環境要因の影響を受けて、トンボ類がそれぞれ生息していることが明らかになった。