はじめに

これまで多くのデータ解析において様々なルールベースのアルゴリズムが提案され研究されてきたが,同時に全ての解析内容をそういったルールベースの方法では表現できないという限界も明らかになった.ニューラルネットワークは人間の神経系をモデルとして提案され,これまでのシステムでは扱い切れなかった学習・認知モデルを表現できる手法として発展してきた.その一方で,周波数領域の解析を行うフーリエ解析を補完するものとして,時間領域の解析も同時に行うことのできるウェーブレット解析が提案され,特に信号処理や画像処理分野においてその研究が大きな成果[25][26]を挙げている.

ウェーブレット解析にニューラルネットワークの学習を応用する手法としてウェーブレットネットワークが生まれた.だが,未だ新しい研究分野であり,これまでのウェーブレット解析やニューラルネットワークと同じように未解決問題を多く孕んでいるために実用的な技術として普及するには課題が多い.

そこで本研究では、ウェーブレットネットワークの理論を整理し、波形解析のための数理モデルであるウェーブレットと、パターン認識のための数理モデルであるニューラルネットワークとの接点を明らかにする。その上で、先行研究では行われてこなかった単層モデルから多層モデルへの拡張を行い、パターン認識問題へ応用する。その応用テーマとして、ここでは音声認識を選んだ。音声波形の特徴量(時間周波数成分)をより的確に捉えるという問題に対して、後述するウェーブレットの性質がうまく適合しているため、ここでは音声認識を扱う。



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