研究の動機

これまでのウェーブレットネットワーク研究では単層モデルによる非線形関数近似に主眼が置かれており[8][9][10],多層モデルの研究事例は殆ど行われていない.本研究では,従来のウェーブレットネットワークモデルに通常のニューラルネットワークで用いられるシグモイド関数で構成した層を重ね,多層化を行う.

ウェーブレットとは時間周波数解析[*]や多重解像度表現、非常に多岐に渡って応用される有用な概念である。しかし、ウェーブレットを用いた解析には非常に複雑な計算が必要になるが故の処理時間の増加や、時間軸上での入力のブレに非常に弱いシフト不変性[7]という弱点も持っている。一方ニューラルネットワークは、バックプロパゲーション学習の提唱とその改良により、学習に必要な処理時間を大幅に短縮してきた。また、Wibelらによって提案されたTime-Delay Neural Network[1][2]は、時間軸上に並んだ入力信号に対し、その時間的なブレを吸収できるモデルとなっている。そして、このニューラルネットワークは、ウェーブレット解析を構成する1つのモデルと、数理モデルの観点から全く同じ構造を持っている。この構造を利用して、ウェーブレット解析のパラメータをニューラルネットワークの学習機構によって求めるモデルが、ウェーブレットネットワークである。本研究では、このウェーブレットネットワークをニューラルネットワークの文法に従って拡張し、より複雑な認識モデルの構築を目指している。



root 2010-02-26