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(@)谷戸のデータベース作成
まず、GISのHydorology Modelingを用いて、市域から非集水域を除くエリアにおいて、小流域の抽出を行った。その結果より、10haの小流域を、本研究における谷戸の基本単位とした。
次に、GISを用いて、鎌倉市の谷戸データベースを作成した。社寺分布、土地利用、法規制についてそれぞれ類型化を行い、10haの小流域に入力した。
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(A)谷戸の類型化
2.谷戸のデータベース作成の結果より、現在鎌倉に存在している谷戸の類型化を行った。
まず、緑地保存に関する法規制・都市計画法と小流域による土地利用類型1を重ね合わせて特徴をみた。その結果、旧鎌倉地域は土地利用類型の結果によって異なる規制の強さの法規制がかけられているが、そのほかの地域は、土地利用類型の結果にかかわらず、地域によって法規制の種類が異なることがわかった。
その中でも社寺地が占める谷戸を見てみると、社寺が占有する円覚寺の谷戸には、谷戸全域に特別保存地区と市街化調整区域がかけられていた。谷底部を社寺が占有する東慶寺の谷戸、社寺と宅地が混在する建長寺・浄妙寺・寿福寺の谷戸、谷底部を社寺と宅地が混在する淨智寺の谷戸には、県道の通る市街地部分を除いた谷戸斜面と谷底部を含む谷戸部分に特別保存地区と市街化調整区域がかけられていた。また、そのほかの社寺と宅地が混在する谷戸は、特別保存地区と保全地区指定が谷戸内の特定エリアに指定されていた。このように、社寺地が占める谷戸には谷戸斜面/谷底部に関係なく特別保存地域で谷戸全体が保全されているものが多いことがわかった。
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(B)まとめ
以上のように、鎌倉市では歴史的風土を構成している社寺を有する谷戸を中心に、法規制を整備しており、社寺が占有するという特殊な谷戸が残っているなど土地利用類型にも好結果が出ていることがわかった。しかし、それ以外の社寺を有さない谷戸については、地形や土地利用など、地域特性に関係ない面的な法規制適用と土地利用となっていることがわかった。
今後、古都としての歴史的環境を保全し、次世代にむけて更新していくには、貴重な緑地を保全すると共に、各地域が保有する歴史都市の構成要素を適切に維持していくことが必要とされる。それには、単に緑地という面的な保全ではなく、都市鎌倉を構成する谷戸ユニットの視点を加え、谷底部を含めた谷戸を一体として捉えることが重要であると考える。現況法規制では、地域によって谷戸への捉え方が異なり、歴史的環境の保全状況もバラバラであることが明らかになった。谷戸ユニットとは、谷底部と斜面からなる地形構造であるが、そこからは豊かな生態系が育まれ、多様な景観が生み出される。このような、都市の魅力となる自然環境と景観に着目し、さらに谷戸ごとの景観構造の特質を明らかにした上で、都市の魅力を活かしたランドスケープ・マネジメント計画を策定することが、重要であると考える。
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