SFC「デザイン・ミュージアム・ファクトリー」コンソーシアム
SFC "Design Museum Factory" Consortium
※本コンソーシアムは終了しました。掲載の情報は終了当時のものです
背景と目的
我が国の美術館・博物館は数の上では世界最大の館数を誇っていますが、その内容・企画の面から見ると、必ずしも欧米のそれと比肩できるものではありません。また、特定のジャンルに特化した専門ミュージアムとなると、整備が遅れており、とりわけデザイン振興を目的として1980年代以降設置が相次いだ欧米のデザイン・ミュージアムに比べて遅れが目立っています。建築の資料保存と現代建築プロデュースのための建築博物館は、企業ギャラリーを除くと実質的にゼロであり、活発な建築界の実情とそぐわないちぐはぐな状況を呈しています。造ることには意欲的でも、歴史を残すことに対しては消極的であったこれまでの業界の姿勢が問われると同時に、歴史的に蓄積されたさまざまなデザインや建築のノウハウが、実は膨大な資産を形成していることに無関心であったことが指摘できそうです。しかし、今後予測される持続的で知価を下敷きとした社会においては、過去にかたちづくられた資産を正当に評価し、その活用を積極的にプロデュースしていくことが前提になり、その意味で、ソフトウェアとしての歴史資産のストックから利用に到る一連のプロセスをプロモートする新たなミュージアムの整備が望まれています。その際、電子化時代にふさわしい新たなミュージアムのコンセプトが必要であることはいうまでもありません。
本コンソーシアムは、過去からのデザインのストックを今日の社会の中で活用することを目標として、ストック(ミュージアム)、発信(メディア)、生産(ファクトリー)のメカニズムを組みこんだ仕組みが基本となります。対象としては、プロダクト・デザインから建築までを横断的する幅広い領域を扱い、デザインの現場と直結した一次資料のアーカイブ化とその活用技術の開発を段階的に実施し、新たに国際的なデザイン・ミュージアム・ネットワークを構築することによってその国際的流通をはかるものとします。
また、ミュージアムから提供されるミュージアム・プロダクトを地域と連携した生産システムのなかでつくりだしていくことも重要です。従来、ミュージアムは多くをメセナ的機構に依存して自己完結的な知的活動(展示と出版)を重んじ、流通性や収益性を二の次にしてきた面が否めませんが、本コンソーシアムの狙いは、むしろ資産活用の視点からミュージアムの内容を再編成し、適正なミュージアム・ビジネスの場としてのデザイン・ミュージアムの方向を追求するところにあります。
本コンソーシアムの活動は、国際的なデザイン・ミュージアムとして展開しているドイツのヴィトラ美術館の協力を得て行われます。近現代のデザインが開拓した新たな領域をストックとしての文化資源とみなし、その活用の仕方を今日の文脈の中で提示する上でもヴィトラ美術館のノウハウは大きな意味をもつことになるでしょう。電子情報時代のなかで、ミュージアム、メディア、ファクトリーにまたがる横断的な研究開発組織を立ち上げ、開かれた社会の中で積極的な展開を果たしていくことが大いに望まれています。
活動内容
本コンソーシアムの活動内容は以下のように大別されます。
- 近現代デザインのデータベース化とアーカイブ化
特定のデザイナーもしくはデザイン・アイテムについて、図面、スケッチ、模型、写真、ならびにデザインプロセスを整理し、ストックを行います。 - デジタル・コンテンツの配信
ストックされたデザイン・アイテムについてパッケージをつくり、ユーザーの求めに応じて配信します。 - ミュージアム・プロダクトの製作
ストックされたデザイン・アイテムの内、商業性のあるものについて生産に移します。ミュージアム・グッヅも含みます。 - 国内外のネットワーク化とサーキュレーション
特定のテーマに沿って展覧会(デジタルを含む)制作を行い、ミュージアム間での巡回を行います。 - 地域産業と連携したファクトリー整備
デザイン・アイテム製作のための地域産業との連携を行い、デザイン産業基盤の底上げを図ります。 - 新たなコンセプト・メーキングと教育を目的とするワークショップの実施
近現代のデザイン思想を知り、その内容を広く共有するためのワークショップを国内外の機関・団体と共同して実施します。
構成メンバー
三宅 理一 代表 | 政策・メディア研究科教授 |
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坂 茂 | 環境情報学部教授 |
太田 泰人 | 政策・メディア研究科教授 |
渡邊 朗子 | 政策・メディア研究科准教授 |
小草 牧子 | 政策・メディア研究科助教 |
高美 玲 | SFC研究所所員(訪問) |