後方散乱通信研究コンソーシアム

Backscatter Communications Research Consortium

開設2019年4月1日
代表者
三次 仁
環境情報学部教授
連絡先
慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス三次研究室
E-mail:info[at]autoidlab.jp
Tel:03-3516-0620
[at]は@に変換してください。

※構成メンバーの所属・職位および本ページに記載の内容は、本団体設立当時のものも含まれます。ご了承ください。

■目的

本研究コンソーシアムは、バッテリ不要の超小型無線端末を用いた新しい無線システムの研究開発を実用化につなげるため、産業化を狙う研究機関・企業と、経験や技術を有する大学・企業などが共同して研究開発や実験を実施しその成果を共有することや、実用に向けた標準化・法令整備などを検討する際の契約的・技術的な拠り所を提供することが目的である。3年間の設置期間中に、これまで進めてきた研究開発成果による試作システムを用いた実証実験を参加企業等と進めるとともに、LSI無線端末を研究開発用に試作し、バッテリ不要・無線通信システムを数10端末規模で実現する。

 

 

■背景とコンソーシアム設立理由

後方散乱通信(バックスキャッタ通信)とは電波の反射を用いた通信方式であり、無線タグシステムやレーダなど、機能・性能が高い基地局装置(リーダライタ)と、機能や性能が低い端末を組み合わせた無線システムで広く用いられている。後方散乱通信の端末は、自ら電波を発信するための発振器や増幅器を有せず、対向するリーダライタから供給される電波に対してアンテナのON/OFFを用いることや、反射波の位相をアナログ回路で変えることで、端末からリーダライタへの信号伝送を可能としている。端末をLSIなどで極めて省電力に作ることで、リーダライタから供給する電波で端末を起動でき、端末側にバッテリ不要で無線通信可能な、システムを構築することも可能である。

従来、後方散乱通信は、端末の識別子やリーダライタからの相対的位置を高速に検知することに用いられてきたが、最近では、MEMSセンサの省電力化などにより、センシング目的でも用いられるようになってきた。中でも、代表者らの研究チームが注目している分野は、産業機械や土木構造物の構造健全性モニタリング(Structural Health Monitoring: SHM)である。SHMとはつまり、構造物の故障や不具合をセンシングによって検知・予知することである。SHM自体は長い歴史を持つが、複数センサ情報をリーダライタ側で完全同期して取得する必要があるため、これまでは試験のためにセンサをワイヤーハーネスで取り付け、検査が終わったら取り外すという形で実用されてきた。このため検知の頻度は低く、また検査による運用停止時間を短くするためセンサ個数を限定し、検知精度は必ずしも高くなかった。

この問題に対してSFCの研究チームは、大量の後方散乱通信を用いたバッテリ不要センサが同時にセンサ情報を無線送信しても、リーダライタ側のデジタル信号処理でそれぞれを分離する全く新しい無線通信方式:マルチサブキャリア多元接続方式(MSMA)を考案・開発し、現在では10端末程度の完全同期通信を実現している。この技術をSHMに適用することで、センサ取り付け・取り外しが不要となり、かつセンサが極めて小さいので、高頻度での検査や、運用中検査が従来以上の精度で実施できる。検査頻度や精度が向上することで、大量データを集めやすくなり、それらの分析による予知保全も実現できる。

これまでは実験室内や特定の橋梁などで実験を行なってきたが、試作システムが安定して動作するようになったため、各種研究機関・企業から共同開発や、実験評価の打診を受けてきた。広く社会で使える技術とするために、研究コンソーシアムを設置し、研究開発を推進する。

 

 

研究活動計画の概要

研究開発

  • 送受信漏洩による位相雑音除去法の開発
  • 複数のリーダライタを用いたマルチゾーン構成によるセンシング覆域の拡大方法の開発
  • 研究開発用LSIチップ検討及び基本設計
  • リーダライタの高速信号処理に関する研究
  • 大量センシングデータを用いた予知保全

 

実証実験

  • 産業機械のモーダル試験
  • 車両衝突などを模擬した広帯域センシング実証

 

推進・啓蒙活動

  • WPT (無線電力伝送)との組み合わせ・協働の検討
  • 欧米等における技術動向、標準化調査

構成メンバー

三次 仁代表 環境情報学部 教授
市川 晴久 SFC研究所上席所員・電気通信大学名誉教授
佐藤 友紀 政策・メディア研究科 特任助教
佐藤 泰介 政策・メディア研究科 特任助教
川喜田 佑介 神奈川工科大学 准教授
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