ケアインフォマティクス・コンソーシアム

Care Informatics Consortium

※本コンソーシアムは終了しました。掲載の情報は終了当時のものです

代表者
熊坂 賢次

目的

日本の介護業界においては、利用者の増加に介護者の数が追いつかず、そのことが質の維持の難しさにもつながってしまっているという問題が指摘されている。本「ケアインフォマティクス・コンソーシアム」は、これからますます少子高齢化が進み担い手が必要となる介護業界で、ITを活用しこのような問題を打開する研究を進めることを目的とする。
従来行われてきた介護業界でのIT活用は、これまで紙媒体であった帳票類の電子化や、要介護認定ソフト、介護報酬請求ソフト、ケアプラン作成支援ソフトという形で実現されている。日々の介護に最も関連の深い帳票類のケースで見ると、紙で管理している際の形そのままに電子化するというケースも少なからず見受けられるが、このような電子化をしたとしても、ITの利用に慣れるのに多くの労力を費やし、肝心の介護業務の効率化には必ずしも繋がっていないケースもある。また、遠隔介護などへのITの活用が徐々に進められてきているが、実用レベルで広く普及するにはまだ時間がかかると思われる。
介護の中でITをより効果的に活用するために、本コンソーシアムでは熟練した介護従事者のノウハウの抽出とその伝承を想定した。多くの場合、介護は直接対面で行われる対人サービスであり、利用者へ高い満足度を与えるためには、利用者の状態を見てどのような介護が必要であるかを判断する高い能力が問われる。これを身につけるには十分な研修や教育が必要である。実際、そのような努力をしている、いわばモデル介護施設とも言えるような施設では、高い利用者満足度のみならず介護事業者の高い意欲をも引き出すことに成功しているが、すべての介護施設がそれだけのコストをかけて教育をすることができないのが現状である。できるだけ少ないコストで利用者満足を少しでも向上させることのできる方法が求められている。ITを駆使して熟練介護士の介護における目の使い方や行動のデータをマイニングし、介護作業時のノウハウを抽出できれば、これを経験の浅い介護士に伝承し、利用者状態の判断を支援するような仕組みも作ることができると期待される。
今後3年間で、上記のように熟練者のノウハウを反映し、少ないコストでも介護の質の向上を実現できるような介護モデルを構築し、介護業界への還元を目指す。

研究活動計画の概要

<< 1年目 >>

先駆的な取り組みをし、利用者満足も従業者満足も高い社会福祉法人こうほうえんをモデル介護施設とし、ここにおける、

  • 現場の質を上げる取り組みの要因抽出(熟練者のコツの抽出)
  • 熟練者のデータからの問題発見と、これに基づく改善プロセスの可視化
  • ITによる支援モデルのパッケージ化

を実施する。また、そのパッケージをこうほうえんの1つのユニットにて実際に適用し、介護内容や介護従事者の利用者の見方に変化が現れるかを検証する。

<< 2年目 >>

1年目の結果をふまえ、こうほうえんの他の事業所の複数ユニットにおいて同様の検証実験を行う。2年目の検証期間は1年目よりも長く、最低でも半年間パッケージを使用することでその効果を検証する。これにより、人や場所の違うユニットでも熟練者のノウハウの伝承により介護内容に変化が現れるかを検証する。また、異なるユニット間に共通する、現場の質を上げる取り組みの要因抽出からITによる支援モデルのパッケージ化までのプロセスをモデル化する。

<< 3年目 >>

3年目は他の事業者の施設においても、同様の仕組みでITによる介護支援ができるかどうかを検証する。こうほうえんのようなモデル介護施設で培われた介護のノウハウを横展開し、モデル介護施設のようには教育・研修に十分な時間を割くことができない施設においてもある程度の質の向上を見込むことができるということがわかれば、多くの介護施設にとって大きな支援となるはずである。このような横展開できるモデルを構築し、介護分野の質向上を目指した具体的なガイドラインの策定を行うことが、本コンソーシアムの最終目標である。

構成メンバー

熊坂 賢次代表 環境情報学部教授:コンソーシアム代表・社会学的見地からの検討
古谷 知之 総合政策学部准教授:統計解析
井庭 崇 総合政策学部准教授:モデリング、シミュレーション
福田 亮子 政策・メディア研究科特任講師:コンソーシアム副代表兼事務局長。介護者・利用者の行動分析および視線解析
松原 仁 政策・メディア研究科特任教授:データマイニング
廣江 研 社会福祉法人こうほうえん理事長
三上 貞芳 はこだて未来大学教授
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