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背景と目的
システムの特徴
GPS
トータルステーション
デジタル写真測量
システムの構築
アンコール遺跡での利用
計測結果の出力
システムの評価
まとめ

要素技術B デジタル写真測量

写真測量のデジタル化

銀塩フィルムを用いたアナログの写真測量技術を利用した3次元計測は古くから行われている。現在、一般に写真測量といえば航空機から撮影した空中写真を用いて地図を作成することを指すが、もともとは空中写真よりも地上で行う写真測量の方が先に行われている。地上写真測量は飛行機が利用できない時代から行われており、現在でも飛行機を飛ばせないような急峻な山岳地の図化などにおいて利用されている。地上写真測量を大別すると、1m程度の基線を持って完全に平行に固定されている2台のカメラを用いて、比較的近くの物体を精密に測量しようとする「近接写真測量(Close Range Photogrammetry)」と、写真経緯儀を利用して2地点以上から撮影した画像をもとに地図を作成する「地形測量」に分けられる。本システムで扱うのは前者の近接写真測量と呼ばれるものである。

現在、このような近接写真測量は交通事故現場や犯罪現場の記録用写真として警察が利用しているほか、造船など産業分野でのプロペラなどの製品検査、トンネルや橋などの建築、土木現場などで幅広く利用されている。このため、近接写真測量専用のカメラが国内外のメーカにより多数製作、販売されている。

しかし、これらの市販されているようなカメラでは100mm程度の大型のフィルムを用いて撮影し、図化機と呼ばれる専用の機械によって図面を作成する作業が必要となる。このような機械は非常に高価であり、操作も難しく一般的に利用できるものではない。このような近接写真測量用カメラは基線長が40cm1.2mと短く、焦点距離も長いため、計測可能範囲は数メートル程度に限られる場合が多い。

その一方で、近年のコンピュータ技術の進歩に伴って、取得した画像をデジタル化して図化機のような特殊な機械を用いずにコンピュータ上のソフトウェアで解析、図化されるようになった。さらに、高解像度のCCDセンサが利用できるようになり、画像の取得自体からデジタルで行おうとする試みが行われてきている。