地図や図面においては約0.3mmの線を用いて描画されこの範囲内で記述できるため、これが図面における誤差の許容範囲となる。このため、例えば遺跡修復に必要とされる50分の1程度の図面を描くには、約1.5cmの精度で描画できることになる。また、従来のトータルステーションなどの測量機器の精度は約1〜2cmとされている。しかし、測量機器の精度が高くてもそれをもとに製図を行う際に2cmの精度で描画を行うことは難しい。
また、今回利用した要素技術は比較的高精度のものではあるが、その精度にも限界がありGPSには約2cm、トータルステーションには約3cm程度の誤差が含まれている。また、本システムで利用したデジタルカメラの1280×1000ピクセルという解像度にも限界があり、10mの対象物を撮影した場合は1ピクセルあたり1cmとなるのでそれ以上の精度を出すことは難しくなる。
現実的には、遺跡で修復を行うような場合に誤差の少ない図面を描いてもその通りに復元を行うことは不可能である。このため、50分の1の図面に1.5cmの精度が必ずしも必要であるとは言えない。
一般的にデータ取得の精度と、コストや効率性とは相反する関係にある。もし精度を上げようとすれば、より高精度の機械が必要となるため機材にかかる費用は増える。また、より精密な作業が要求されるため、データ取得作業にかかる時間も多くなる。このため、精度とコストや効率性を考慮しつつ、目標とする精度を定めることが必要となる。
このような理由から、本システムでは10cmの精度で測量できるシステムを開発することを目的とする。ここでいう精度とは、測量を行ったある点の座標がグローバルな絶対座標と比較して10cm以内の誤差にとどまっていることを意味する。