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            ■■ 大阪府での学校評価 ■■■■■■■■■■■■■■■■■

 金子研究室コミュニティマネジメントリサーチプロジェクトでは、2002年度より、大阪府での学校評価実施状況に対して調査・分析を行っている。ここでは2002年9月から翌2003年にかけて実施されたアンケート調査の一部を抜粋して報告する。

学校へのアンケート調査結果(一部)

 58の質問項目からなるアンケート用紙を、2002年9月上旬に大阪府(大阪市を除く)の全公立小中高1233校(定時制・通信制を除く)に送付した。回答対象は校長、教頭、学校教育自己診断担当教員のいずれかとした。アンケート実施時点である2002年9月までに59%の学校で自己診断が実施され、その1/3強にあたる239校から回答があった。回答のなかった学校に対しては、電話による調査を行い、全体の93%の学校から何らかの反応を得た。アンケートの回答の分析から、典型的ないし特徴的と思われる学校を8つ選び、面接によるヒアリング調査を行った。以下では、58の質問のうち、学校評価実施の現状と実態に関係する質問についての回答割合を示す。なお、本調査は、慶應義塾大学、政策・メディア研究科、金子郁容研究室の井出泰斗の修士論文を作成する研究として実施されたものである。

■学校教育自己診断実施の現状と実態

図 1 学校教育自己診断導入のきっかけ

 学校教育自己診断導入のきっかけとしては、222校が回答を行い、その内、87%の194校が「教育委員会からの指導があったから」と回答した。続いて、8%の17校が「学校で自主的に始めた」とし、「近隣の学校が始めたから」6校3%、「教員からの要望があった」3校1%、「保護者からの要望があった」2校1%と続く。

図 2 学校教育自己診断実施状況

 学校教育自己診断の実施状況では、校長用、教職員用、児童・生徒用、保護者用の4対象全てに対して学校教育自己診断を行っている学校が、239校回答した内、55%の133校が全てに対して行っていると答え、90校、38%が「部分的に行っている」つまり、1つ、2つ、3つのいずれか行っていると答え、全く行っていないと答えたのは、16校、7%に留まった。しかし、未回答校があるため、実際の実施状況は把握できなかった。

図 3 学校教育自己診断実施頻度

 学校教育自己診断の実施頻度は、223の回答校の内、76%、168校が1年に1回行っている。しかし、22%、50校では、2〜3年に1回の頻度で学校教育自己診断を行うと回答している。実施頻度が1年に1回の学校が、7割を超えたが、2〜3年に1回という学校も少なくない。

図 4 学校教育自己診断導入時の教職員の意見

 学校教育自己診断導入時の教職員の反応は、回答校221校の内、「全く必要ない」が9校で4%、「あまり必要ない」と答えたのが84校で38%、「どちらともいえない」が55校で25%、「やや必要である」65校29%、「絶対に必要である」8校4%と続く。学校教育自己診断導入時の教職員の反応は、「全く必要ない」と「あまり必要ない」を合わせると42%、「絶対必要である」と「やや必要である」の答えを合わせると33%となる。4割の学校で教職員が学校教育自己診断導入に反対したことが分かる。

図 5 学校教育自己診断導入後の教職員の反応

 213の回答校の内、「強く反対した」13校6%、「やや反対した」21%45校、「どちらともいえない」49校23%、「やや賛成した」73校35%、「強く賛成した」33校15%となっている。実際に学校教育自己診断を導入してからは、その有効性を教員が認めたためか、導入前に比べ、賛成意見が増えている。導入前は、必要性を感じていなかった校長が42%だったのに対し、導入後は、27%となっている。

図 6 学校教育自己診断変更度合い

 大阪府では、学校教育自己診断票のひな形を校長用、教職員用、生徒・児童用、保護者用の4種類×小・中・高等学校用の3種類、計12種類 を提示している。回答校221校の内、「そのまま使っている」が39校18%、「少し変更している」が109校49%、「半分程度変更している」が35校16%、「大部分変更している」33校15%、「全て変更している」5校2%という結果になった。

図 7 学校教育自己診断公開度合い


学校教育自己診断の公開度合いは、回答校219校の内、「全てを公開している」のは60校27%、「一部を除き公開している」が116校54%、「差し支えないもの以外は公開している」20校9%、「ほとんど公開していない」14校6%、「全く公開していない」9校4%であった。

図 8 学校教育自己診断公開先

学校教育自己診断の公開先だが、「保護者への配付資料」が151校、次いで、「校内だより」58校、「校外向け」27校、ホームページ1校だった。この項目は複数回答可能であるため、複数の媒体へ公開している学校もあった。

図 9 学校教育自己診断の変更・更新度合い

 学校教育自己診断の回数を重ねるごとに診断票の変更をしているかどうかという問いに対しては、回答校211校に対し、「変更している」が15校8%、「やや変更している」が83校42%、「どちらともいえない」44校22%、「あまり変更していない」27校14%、「全く変更していない」27校14%だった。

図 10 学校内に学校教育自己診断委員会設置

 実際委員会を設置している学校は、回答校221校の内、102校46%が「設置している」、119校54%が「設置していない」であった。

 

図 11 診断結果から具体的な対策を講じた

 「対策をとった」27校12%、「やや対策をとった」68校30%、「どちらともいえない」47校21%、「あまり対策はとっていない」66校29%、「対策はとっていない」18校8%であった。

図 12 学校教育自己診断によって浮き彫りにされた問題は学校だけで改善できる

 学校教育自己診断の結果浮き彫りになった問題点がどう解決されるかについて聞いたみたところ、問題点は教育委員会の力を借りずに学校単独で改善「できる」と答えたのが206の回答校の内、18校9%だった。「だいたいできる」と答えたのが105校51%、「どちらともいえない」が54校26%、「できないものが多い」が28校14%、「全くできない」に関しては1校0%であった。問題のほとんどが、学校単体で解決できるものである。学校単体で解決できない問題点としては、143校が「教員の充実」、151校が「施設の充実」を訴えていた。教育委員会が持っている人事権、予算県を学校に委譲して欲しいなど、学校の裁量権拡大を訴える回答も多く見られた。

 

図 13 学校教育自己診断の結果浮き彫りになった問題点

 学校教育自己診断の結果浮き彫りになった問題点を聞いたところ、「教員の教え方、意識の問題」が122、「保護者の学校への理解不足・保護者への伝達不足」が106、「生徒の授業態度・意識の問題」が39、「校長の授業現場への理解不足」が4であった。アンケート対象が校長・教頭であるためか、教員に問題があるとの回答が多く、校長の授業現場への理解不足との回答は少なかった。

図 14 学校教育自己診断は必要か

 校長・教頭は、「学校教育自己診断は必要だと思うか?」の問いに対して、回答校217校に対し、「そう思う」103校47%、「ややそう思う」99校46%、「どちらともいえない」10校5%、「あまりそうは思わない」5校2%、「全くそうは思わない」に至っては、0校であった。

図 15 今後も学校教育自己診断を続けていきたいか

 今後も学校教育自己診断を続けていきたいかとの問いに対しては、217校中、140校64%が「続けていきたい」、54校25%が「やや続けていきたいと思う」、19校9%が「どちらともいえない」、4校2%が「あまり続けていきたいと思わない」と答えた。

図 16 学校経営における学校教育自己診断の重要度

 

■学校内外のコミュニケーションと学校改善の関係

 「学校内外のコミュニケーションが活発である(と校長が答えている)」ことと「学校教育自己診断実施の結果に基づいた学校改善が行われている(と校長が答えている)」が関連しているかについての仮説検定した。学校内のコミュニケーション活発度はアンケート質問項目Q45〜56によって測っている。これらの質問項目は1から5まで選択肢があり、それらの重みづけ総和によってコミュニケーション活発度を測る。学校外のコミュニケーション活発度は、学校協議会と地域教育協議会の活発度を、それぞれQ27〜32(Q27、28、29は逆転スケールとして計算)、Q35〜40(Q35、36、37は逆転スケールとして計算)の総和より測る。学校協議会は、校長の求めに応じて学校外の委員により学校改善のための意見や助言をとりまとめる機関であり、地域教育協議会は、学校・家庭・地域の三者が協同して地域教育活動や学校教育支援を行う機関である。これらの分析により、以下の3点が明らかとなった。

1.学校内のコミュニケーションが活発度と学校改善を行っていると回答している学校には、正の中   程度の相関傾向が見られた。

変数
平均
標準偏差
相関
学校内のコミュニケーション
41.53509
6.006135
0.55682
Q16
3.578947
1.093793

図 17 学校内のコミュニケーションと学校改善度合い

2.学校協議会のコミュニケーション活発度と学校改善を行っていると回答した学校には正の中程度  の相関傾向が見られる。

変数
平均
標準偏差
相関
学校協議会活発度
19.83333
4.121397
0.469038
Q16
3.666667
1.034612

図 18 学校協議会のコミュニケーションと学校改善度合い

3.地域教育協議会のコミュニケーション活発度は学校改善に関連しているとは統計的に相関関係   はなかった。

変数
平均
標準偏差
相関
地域教育協議会活発度
22.8439
4.148689
0.034091
Q16
2.932927
1.124905

図 19 地域教育協議会のコミュニケーションと学校改善度合い


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