大阪を中心としたこれまでの学校評価に関する調査で、大きく以下のような課題点が浮かび上がった。
こうした課題を解決する上での必要なリソースとしてわれわれのプロジェクトでは、学校評価支援システムを開発し、実践研究を始めている。学校評価はその取り組みがまだはじまったばかりではあるが、学校に関わるステークホルダにとって、共通の視点を持つための重要なツールとなっているのは事実である。これから学校評価に求められるものは、情報共有のツールであり、本研究プロジェクトでは、今後ともこうしたツールの調査・開発をすすめていく。
1. 評価結果から、「教員の教え方や意識」、「保護者の学校への理解不足」、「保護者への情 報伝達不足」など が問題点として浮かび上がった。
2. ある小学校では、「学校が家庭・地域の願いに応えているか」について、教職員の95%が「 YES」であった一方、保護者の「YES」は54%であったなど、保護者と教職員の認識がズレて いる場合があった。比較のためには、 異なった評価者に対して、また、一定地域内で、 共通質問項目を設けることが重要であろう。
3. 学内外のコミュニケーションが活発な学校ほど学校評価の結果が学校改善に生かされてい る傾向にある。
4. 教員間のコミュニケーションが盛んで、地域との関係も良好であり、学校評価の結果が生か されている学校がある一方で、校長ひとりががんばっても教員側に学校評価を実施したり改 善したりする意欲がみられない学校もあった。
効果的な学校評価の導入には校長のリーダ ーシップが不可欠であるが、それだけでは十分でなく、前提となる体制を作るためのステップ がいくつかあることが分った。
5. 「学校単独で解決できる」と認識されている問題点が多い(60%)にも関わらず、実際に「対 策をとった」学校は42%であった。
6. ある中学校では、保護者から「授業の進め方に問題がある」「子どもをもっとよく見てくれ」な ど厳しい意見があったが、校長は「学校のために親身になって答えてくれている」と受け取っ た。ある高校の校長は、学校としてマイナスイメージと受け取られかねない評価結果もあえて 公表することで、教職員の意識を高め改革を進めようとしている。厳しい評価結果も改善のた めの貴重な情報になりうる。
7. 教職員が学校評価の導入に際して「必要ない」とした学校が約40%あった。 評価導入後は 教職員が「反対」した学校が21%となり、実施したことによって学校評価への理解が進んだ。
8. 約9割の学校の校長が、学校評価は必要と感じ、学校経営において継続的に実施すること が重要だと認識している。年一回程度の学校評価を継続的に実施して時系列データを得るこ とが重要であろう。
9. 評価結果を全て公表している学校が27%、まったく公開していない学校が4%あった。結果 の公開先は「保護者」(63%)がもっとも多く、次いで「校内」(24%)、「校外」(11%)。ホームペ ージでの公開は1校のみ。
10. 学校評価実施の契機としては「教育委員会からの指導」が約9割。新しい試みを始めるに あたっては教育委員会の指導が重要であることが分った。その一方で、実施後に教職員・校 長ともに「必要だ」という意見が多くなること、「近隣の学校が始めたから」とする学校が数校 あったことなどからして、普及が進めばより自主的な実施が広がることが予想される。
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