Society5.0時代の学びと教育・ラボ
開設 | 2019年8月1日 |
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代表者 |
矢作 尚久
政策・メディア研究科 教授 |
連絡先 |
慶應義塾大学湘南藤沢キャンパスε309 ・日本橋ライフサイエンスビルディング 9階
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目的
人工知能(AI)、ビッグデータ、Internet of Things(IoT)、 ロボティクス等の先端技術が高度化してあらゆる産業や社会生活に取り入れられ、社会の在り方そのものが「非連続的」と言えるほど劇的に変わることを示唆し、提唱されたSociety5.0時代。文部科学省も2018年6月「Society 5.0に向けた人材育成~社会が変わる、学びが変わる~」を発表したが、Society5.0時代において求められる人材像・人間像が大きく変化していくなか、本ラボラトリは、新たな学びや教育の変革を先導するための研究と人財の育成と情報発信を行う。本ラボラトリの3年間の主たる目的は以下のとおりである。
まず第一に、生徒一人一人が、Society 5.0 における自らの将来の姿を考え、その姿を実現するために必要な学びを能動的に行える場と機会の提供が今こそ求められている。学校だけで教師だけが一方的に教えるような教育活動から、多様な選択肢の中で、自分自身の答えを生徒が自ら見いだすことができるような学習活動が中心となるよう、生徒一人一人の興味や関心に沿って、学校だけにとどまらず、地域社会、企業、NPO、高等教育機関といった多様な学びの場を活用し、異なる年齢や背景を持つ相手とコミュニケーションしながら「社会に開かれた教育課程」による学びを進めていく必要がある。こうした観点から、その先導的役割を担う「マイ・プロジェクトやPBL推進を通じたアクティブ・ラーナー育成」に関する研究と実践支援を行うことを目的とする。(Unit 1関連)
第二に、AIをはじめ先端技術の発達を背景として、Society 5.0 における学びは、一斉一律の授業スタイルの限界から抜け出し、読解力等の基盤的学力を確実に習得させつつ、個人の進度や能力、関心に応じた学びや、同一学年での学習に加えて、学習履歴や学習到達度、学習課題に応じた異年齢・異学年集団での協働学習も広げていくことを可能にする。その際、これまでの学校や教師の存在を一から再定義し再構築する必要も生じてくる。こうした観点から、「AIはじめ先端技術を活用した公正に個別最適化された学びの実現」と、「新たな学校・教師のリデザイン」に関する研究と実践支援を目的とする。(Unit2関連)
第三に、Society5.0に必要な、技術革新や価値創造の源となる飛躍知を発見・創造する人材、技術革新と社会課題をつなげプラットフォームを創造する人材、様々な分野においてAIやデータの力を最大限活用し展開できる人材を育成していくためには、SFCなどを除く多くの高校・大学で、常態化している文理分断教育の現状を脱却し、文理両方を学ぶ高校・大学への改革が望まれている。こうした観点から、「文理分断からの脱却をめざす高校・大学改革」に関する研究と実践支援を目的とする。(Unit3関連)
第四に、個に最適化した学びを実現するためには、特に学びに支援が必要な子供たちの支援を手厚く行っていく必要がある。例えば、発達障害や聴覚障害の子供たち、これから増加が見込まれる外国にルーツをもつ子供たちなどが主体的に学び、自分の役割を日本社会に見出して活躍できるよう言語や学力の支援をすることが必要である。こうした観点から、外国にルーツをもつ子供たちや特別支援の必要な子供たちの日本語の能力、思考能力を測るアセスメント開発と彼らのことばの力を伸ばし、学力を向上させるための実践支援に関する研究を目的とする。(Unit4関連)
なお、本ラボでは、研究者だけでなく、現場で活動する教職員や学校経営者、教育関連の非営利・営利組織の関係者らと共に、共同研究と人材育成、発信を重点的に取り組む。
注)Society5.0とは、サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)のこと。狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)に続く、新たな社会を指すもので、第5期科学技術基本計画において我が国が目指すべき未来社会の姿として初めて提唱された。 / PBLとは、問題解決型学習、マイ・プロジェクトとは、実践型探求学習プログラムを指す。
研究活動計画の概要
(Unit1)
・全国高校生マイプロジェクトアワード共催
・現場関係者に向けたオンラインサロンの運営
(Unit2)
・企業との共同研究
・勉強会の実施
(Unit3)
・大学経営者向けの勉強会の実施
(Unit4)
・アセスメントの開発や改訂、配布、修正
構成メンバー
矢作 尚久代表 | 政策・メディア研究科 教授 代表 |
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今村 久美 | 総合政策学部 特別招聘教授 副代表 |
安宅 和人 | 環境情報学部 教授 |
井上 英之 | 政策・メディア研究科 特別招聘准教授 |
井庭 崇 | 総合政策学部 教授 |
今井 むつみ | 総合政策学部 教授 |
金杉 朋子 | 総合政策学部 講師(非常勤) |
佐久間 信哉 | 政策・メディア研究科 特任教授 |
田中 浩也 | 環境情報学部 教授 |
東海林 祐子 | 政策・メディア研究科 准教授 |
中室 牧子 | 総合政策学部 教授 |
夏野 剛 | 政策・メディア研究科 特別招聘教授 |
長谷部 葉子 | 環境情報学部 准教授 |
矢作 尚久 | 政策・メディア研究科 教授 |
梅嶋 真樹 | 政策・メディア研究科 特任准教授 |
町塚 梨恵子 | SFC研究所 所員 |
■Unit 1
マイ・プロジェクトやPBLの推進によるアクティブ・ラーナー育成
・キーワード:マイ・プロジェクト、PBL、価値を見つけ生み出す感性と力、好奇心・探求力の獲得 、地域の良さを学びコミュニティを支える人材の育成
・責任者:今村 久美(総合政策学部特別招聘教授)
■Unit2
AIはじめ先端技術も活用した公正に個別最適化された学びの実現と新たな学校・教師のリデザイン
・キーワード:公正に個別最適化された学び、学びのポートフォリオ、EdTech先端技術の活用、教育ビッグデータの収集・分析、スタディ・ログ
・責任者:鈴木 寛(総合政策学部教授)
■Unit3
文理分断から脱却をめざす高校・大学改革
・キーワード:文理分断からの脱却、入学者選考改革、高校・大学のカリキュラム改革、企業や地域と協働した学際的プロジェクト型教育
・責任者:鈴木 寛(総合政策学部教授)
■Unit4
発達障害、聴覚障害、外国ルーツ児童をはじめとした、ことばの支援、学習支援が必要な子供に対してのアセスメントと支援方法の提供
・責任者:今井 むつみ(総合政策学部教授)
※構成メンバーの所属・職位および本ページに記載の内容は、本団体設立当時のものも含まれます。ご了承ください。