システムバイオロジー・ラボ

Systems Biology Laboratory

開設2002年7月1日
代表者

概要

バイオインフォマティクスは、バイオとITの境界分野です。慶應義塾大学では2002年、理工学部にもバイオ関連の学科ができ、また、他大学でもこの分野への取り組みがなされてきましたが、SFC研究所では、1995年というとても早い時期からバイオインフォマティクスに取り組んでおり、この分野のパイオニアであると自負しています。
また、SFC研究所のバイオインフォマティクス・ラボは世界でも最もアクティブであり、バイオインフォマティクスを学んでいる学生の数は、おそらく世界のどこのバイオインフォマティクス・ラボの学生の数よりも多いと思います。

このラボでは、遺伝情報をコンピュータで比較・解析して、遺伝子の暗号文を解き明かすことを目的とした、ゲノム配列情報のコンピュータ解析や、細胞生物学の知識をもとに、コンピュータ上に細胞を再構築し、遺伝子操作や薬物添加の反応を予測するためのバーチャルな実験を行うことを目的とした細胞内代謝のコンピュータシミュレーション「E-CELL」の研究を行っています。他にも赤血球、大腸菌、心筋細胞、神経細胞といった細胞のシミュレーションや、稲の代謝、糖尿病の研究を行っています。

目的

近年、バイオインフォマティクス、特に細胞のモデリング・コンピュータシミュレーションは、複雑な細胞内代謝の動的な振る舞いを理解するための新しい方法論として、注目を集めています。医療や創薬、微生物の工業利用や環境浄化などの産業応用という面でも、21世紀の最重要技術の一つとも言えましょう。SFCでは1995年に細胞シミュレーションの「E-CELLプロジェクト」を発足し、シミュレーションのための基盤ソフトを開発し、それを用いて様々な細胞代謝モデルを構築してきました。しかし細胞シミュレーションのためのソフトウェア技術やモデリング技術はいまだに開発途上であり、大規模な細胞モデル構築のために解決すべき問題は山積みされています。本ラボラトリでは日本のソフトウェア技術およびバイオ技術を結集させ、この分野で世界のリーダーシップを取ることを目指します。

研究計画

細胞シミュレーション、代謝工学、分析化学、ゲノム工学の知識、手法を結集して、細胞代謝の網羅的解析Metabolome analysisを行い、これまでに例のない本格的な細胞代謝シミュレーション・モデルを開発します。開発したモデルは、工業利用に最適な微生物を確立するなど有用微生物のCAD(Computer Aided Design)のための強力なツールとなることが期待されます。精密なシミュレーション・モデルを構築するために、微生物を制御培養し、再現性の高いデータの獲得を目指します。

精密なモデル化のために特にこれまでデータが少なかったのが、小分子を中心とする細胞内代謝物質です。それら代謝中間物質の濃度を網羅的に計測するために、代謝工学グループでは、バイオリアクターを用いて再現性の高い制御培養を行い、試料採取します。分析化学グループでは、これまでに開発した、網羅的測定のための基盤技術を用いて、これらの試料を計測します。バイオインフォマティクスグループでは、これらの網羅的計測から得られるデータからモデルを構築し、シミュレーションを実行するための細胞シミュレーション環境E-CELLの新バージョンの開発を進めており、Version3のβ版を公開する予定です。シミュレーションモデル構築も、大規模モデル構築のためのデータベース開発など、環境を整備しつつ進めていきます。

構成メンバー

内藤 泰宏代表 環境情報学部教授
冨田 勝 名誉教授
金井 昭夫 環境情報学部教授
曽我 朋義 環境情報学部教授

※構成メンバーの所属・職位および本ページに記載の内容は、本団体設立当時のものも含まれます。ご了承ください。

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