Method5.全体構造の可視化

 

5-1. “スーパーフラット”の誕生

 各レイヤー内でのクラスタリングが完了した。下位レイヤーほど1クラスター内のアイテム数が多いわけであるから、OR関係で「アイテム回答履歴」を「クラスター回答履歴」に置き換えれば、レイヤー内クラスタリングがアイテム数の縮減という目的と同時に、レイヤーを超えた回答ユーザ数の平準化をも達成していることに気づかされる(右図)。

 この時、データ的な階層問題はほぼ解消され、上位レイヤーから下位レイヤーまでが平面となった、擬似的な“スーパーフラット”構造が生まれる。こうして、レイヤーの違いを超えた全クラスターの解析がはじめて可能となるのである。
 これは例えるなら、「木」(アイテム)が「林」(クラスター)を作成したことにより、「森」(全体構造)を見る、巨視的な視点を得たに等しい。

 

5-2. 最適な自己組織化マップの選択

 「クラスター」と「ユーザ」とを行列に取り、回答された場合を1、回答されなかった場合を0とする、フラグ値によって構成されるテーブルを入力データとして用意する。そして、Kohonenネットワークの実行により、幅40×長さ30の計1,200セルで構成される自己組織化マップ(SOM:Self Organization Map)に写像し、その結果を視覚化する。

 クラスターごとに、出力された座標を中心とした円を描くが、アイテム本来の認知度を考慮して、上位レイヤーのクラスターほど円周を大きく表現する。こうして完成した図を「メディアマップ」と名づける(右図は「マンガ」のメディアマップ)。

 メディアマップは、隣接の値を変更して複数回描き、全クラスター分散が大きいものを候補としていくつか選び、その中から、レイヤー毎でもクラスター分散が大きいものを最適なマップとして選択する。これは分散が大きいほど、事象全体の構造をよく説明しているとする、多変量解析の伝統的考え方に基づいている。


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